A2.5 草双紙という絵本

風流 振袖べんけい』中巻
作者:富川吟雪
書型:中本 3巻3冊
出版:安永1年(1772)
所蔵:立命館ARC  作品番号:hayBK03-0280.

 草双紙は、物語本に絵を加えることで説明しているものである。そもそもは子供向けであったが後に大衆向けに多くのものが作られる。御伽草子絵巻のような文を絵で説明するという構造が絵本の中に作られている。そもそも赤本から黒本・青本、最終的には黄表紙へと変化していく中で、子供向けの絵本から大衆や大人向けのものも増えていく。さらに赤本は、明治期になると派手な装丁でリメイクされるのである。
 本作は、青本の草双紙である。青本は、萌葱色の本を指す。退色しやすいこともあって、原色をとどめる書物の伝存はきわめて稀である。登場人物の着物などに書いてある漢字は、主要な登場人物を明確にするための手法だ。絵と文章が分けられておらず、絵の中に文章があるのも大きな特徴である。(Y)