F1.6製本作業②裁断と下綴じ

『的中地元問屋2巻』
著者・絵師:十返舎一九
書型:中本、2冊
出版:享和2年(1802)
出版者:村田屋次郎兵衛
所蔵:国立国会デジタルコレクション 作品番号:2537597


裁断>
左の画製作裁断.gif像をご覧いただくと、裁断の様子が描かれている。丁合と水寄が終われば、次の作業は紙の裁断である。裁断は、草双紙の左右・前後を庖丁で裁ち揃えるという作業である。「裁庖丁」と呼ばれる庖丁を使い、先ほどの丁合作業で一組にまとめた草紙の左右・前後を一気に裁ち切る。小数部であれば定規を使い裁ち切るが、数ものでは、あらかじめ本の仕上がり寸法に合わせて、「切方」と呼ばれる型板を作り、それに庖丁の背の下方を添わせて裁ち切る。また、冊子本の復元をする際の裁断では裁庖丁は一切使用しない。


<下綴じ>
和本は、表紙と摺本を糸で綴じることで冊子上に出来ている。摺り上がったままの製本前の書物の中身を摺本という。摺本は、これまでの作業ですでに一組ずつになっているが、まだ綴じられていない状態である。つまりこの段階ではまだ、本という形態になっていない。そこでここでは、一冊ずつ下綴じを行う。下綴じをしておくと、本が丈夫になり、万一綴じ糸が切れても本が崩れる心配がない。厚い本の場合、むすびといって二つ穴をあけ、こよりを通し表で結ぶ。しかしこの方法は、表紙のその部分がすれて痛むという欠点があるので、上物では、鯨のひげか籘の丸棒を一本ずつ二ヶ所通す方法がとられる。この方法だと弾力があり、本の開閉の具合もよくなるという利点がある。(野)