F1.5製本作業①摺り上がった草紙のその後

『的中地元問屋2巻』
著者・絵師:十返舎一九
書型:中本、2冊
出版:享和2年(1802)
出版者:村田屋次郎兵衛
所蔵:国立国会デジタルコレクション 作品番号:2537597


<折と目合わせ>
分業制の江製作折.gif戸時代には、折りを専門に引き受ける折屋が生まれた。折りは製本屋の中の女手の受持であった。慣れた者なら一日五千枚折ることができた。また当時は日給制がとられていた。昔の折り方は「折鞍」と呼ばれる三角の台を使用し、摺り上がった各紙に折り目をつけた。摺り上がった草紙を折鞍にかぶせ、中央の柱の部分で二つ折にし、百枚ずつ折り重ねる。折鞍を右側に置き、右手で一枚ずつ取っては折り曲げ、透かして見ながら裏表の輪郭を合せ、「片台」と呼ばれる台の上に置いて、ヘラで下から上へなじませ手前から向こうに強く引いて折り目をつける。版面が食い違わないように摺られていれば、紙の端と端とを合わせ折る方法でよいが、昔の木版摺は今より不揃いだったことから、文字や輪郭、版面に見当をつけて折った。最後に丁ごとに百枚ずつ数え左右の向きを交互に積み重ね、上に重しとして木を乗せて折り目を整える。ここまでの作業を「目合せ」という。


<丁合と水寄>
先の段階
製作丁合.gifで折上げた草紙を、丁附の順に取り合わせて一冊にまとめる仕事を「丁合」または「丁合を取る」と呼ぶ。百枚つづりの目合せをした草紙を、丁附の逆に左の方から右へ扇型に並べる。座ったまま体をねじって端から端まで手が届く程度に広げて並べ、左の端から順々に一丁ずつ抜き取っては左手に持つ。一巡りしたら、もとにかえって再び取る。これを繰り返す。もし誤って、同じものを二丁取ったり取り落とした場合、最後に不足や余りが出るので、すぐに間違いを発見できるわけである。目合で正確に百枚ずつ数えておくのはこのためである。一冊の順にまとまれば、折り目に水刷毛でサッと水を引き折り目を落ち着かせ、上下に板を当てて締める。唐紙などの紙によっては水寄は禁物である。(野)