B1.3 本格的な日本画譜の嚆矢と技術の発展

『明朝紫硯』 上巻
絵師:大岡春卜 
書型:大本 3冊
出版:1746(延享3)年 
所蔵:Ebi(個人) 所蔵番号:Ebi0586.

 先に紹介した『絵本通宝志』とは違い、作品そのものを主眼とする本格的な日本画譜の嚆矢が延享元年(1744)刊『詠物史画』と延享3年(1746)刊『明朝紫硯』である。とりわけここに紹介する後者『明朝紫硯』は色刷り画譜の最初の例とされ、その印刷技法が繊細な工夫に富んでいる点から、美術的意義が大きい。この作品以前、中国からもたらされた多色刷りの作品に影響を受け、日本でも多色刷り絵の製作が試みられた。この『明朝紫硯』も中国で刊行された多色刷りの作品『芥子園画伝』に取材しているが、それを超える出来映えとの評もあり、この作品によって日本に於ける多色刷り技術の確立が証されたということも出来る。この時期には多色刷りのような技術が発展し、目に楽しい作品が多く刊行された。その例としては、多色刷り絵本の早い例として宝暦12年(1762)刊『海の幸』があり、たらし込みと呼ばれる尾形光琳独特のにじみを版本で表現した享和2年(1802)刊『光琳画譜』がある。(戸)

【参考作品】
『海の幸』
絵師:勝間竜水 
書型:大本 1冊
出版:宝暦12年(1762) 
所蔵:大英博物館 所蔵番号:JIB0479.

 BM-JIB0479

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