B1.4 浮世絵師の絵本

『絵本和比事』巻三
絵師:西川祐信
書型:半紙本 9巻付巻1巻10冊
出版:寛保2年(1742)
所蔵:中井家コレクション 作品番号:nakai0188.

 西川祐信は狩野永納・土佐光祐に絵を学んだ浮世絵師であり、絵本だけでもその制作は百数十種に上ると目される。ここまで紹介してきたように、絵本制作の中心はやはり大和絵大家やそれに準ずる家だったが、西川祐信が出たことで浮世絵師による絵本が生まれていく。彼は一枚刷りの版画家としてでなく、絵本の製作に重点を置いた絵師としての存在の嚆矢だった。この『絵本和比事』は西川祐信の絵本の一つであり、様々な画題とその心について記されている。彼の絵本は、画法を教えるだけのものではないからこそ、絵だけでも楽しむことができるものだった。この場合手本としての絵の中に説明的な意味や風俗的な要素を取り入れることが可能になる。このことが絵本というものの機能を拡大させていく一要因になったことは間違いない。事実、享保年間以降「絵本」を冠する作品が盛んに登場するようになるが、この時期の「絵本」の語には単に絵の手本としての意味だけでなく、説明的・風俗的な絵を提供するという意味も付随するようになっていた。そのような絵本の作者としても西川祐信は一頭抜きん出ており、下に紹介する『絵本玉かづら』も女性の風俗的な絵を描いた絵本である。(戸)

【参考作品】
『絵本玉かづら』
絵師:西川祐信
書型:半紙本 1冊
出版:享保21年(1736) 
所蔵:立命館ARC 所蔵番号:eik2-0-68.

 eik2-0-68