B3.2 中期・似顔の登場

『絵本舞台扇』
絵師:勝川春章・一筆斎文調
書型:大本 3冊
出版:明和7年(1770)
所蔵:The British Museum 作品番号:JIB0018.

 版元雁金屋伊兵衛より錦絵摺で刊行。
役者絵本の流れに於いて役者が似顔で描かれるようになった初期の作品であり、役者似顔絵はこの一筆斎文調・勝川春章の二名手より創始、発展された。扇形の枠の中に役者の半身像が、それぞれの顔の特徴を強調した似顔で描かれる。初版では全106名が描かれ、人気や格付けのあまり高くなかった役者まで幅広く取り上げられている。
 後に取り上げられた役者のうち数名が改名したことに伴い、枠外に付された名前を彫り変え、新たに全身像をいくつか加えた再販本が刊行されている。
序跋文からは、井原西鶴の孫にあたる東鶴が、江戸役者絵の盛んであることを大阪へ帰る際に上方へ伝えるために作られたということが読み取れる。また、後に『絵本続舞台扇』として、上方で役者名や紋、絵の一部を彫り変えた改竄本が出版されている。(I)

【展示作品】
出版:大正6年(1917) (風俗絵巻図書刊行会による複製本) 
所蔵:立命館ARC 作品番号:hayBK01-0065.