B3.1 初期の役者絵本

『風流四方屏風』上巻
絵師:鳥居清信〈1〉
書型:大本 2巻2冊(稀書複製会本)
製作:元禄13年(1700)
所蔵:大英博物館 作品番号:JIB0018.

元禄13年に江戸の板木屋七郎兵衛から墨摺の大本2冊で出版された役者絵本。
役者絵本の最初期の作品と言える。
元禄期に活躍した役者の舞台姿を半丁に一名ずつ描いている。
この作品の中では役者の顔はまだ似顔で描かれておらず、それぞれの顔は役柄によって様式化されており、役者の姿の上下に記された定紋と名前によって個人が識別されている。
清信自身による序文からは、鳥居派の様式を定義づけ、世に広める鳥居派の絵手本のような意図をもって企画されたことが読み取れる。

これ以降、次に出版される役者絵本の中で主なものは、約50年後の宝暦2年(1752)、石川豊信『絵本東の森』である。『絵本東の森』は同作者によって同じ時期に出版された子ども絵本と同じ形式を持ち、紋の付された役者の全身像とともに和歌が紹介されるが、この本でも未だ似顔の手法は使われていない。(I)

【展示作品】
鈴木重三編「日本風俗図会集成」(臨川書店、昭和54年発行)