B3.3 役者の素顔と日常

『役者夏の富士』
絵師:勝川春章
書型:半紙本 1巻1冊
製作:安永9(1780)
所蔵:中井家コレクション 作品番号:nakai0452.

似顔登場以降では、似顔によって衣装や紋で表現することなく人物を描き分けることができるようになり、舞台上での役柄を離れた役者の素顔や日常を題材にした作品が生まれた。

題名の「夏の富士」とは、夏場に雪が解け地肌が見える富士山から、白粉を落とした役者の素顔を描いていることを表している。
文政十一年(1828)には歌川国貞より同書名の『三賀之津俳優素顔 夏の富士』が出版される。
勝川春章の『夏の富士』が墨摺であったのに対し、こちらは彩色摺りで三都の役者の日常図を役者名とともに描いたものである。またそれに加え、稽古風景や舞台裏も描かれている。序は四世鶴屋南北による。
このような作品は、普段一般の人々が目にする機会のない素顔や日常を描くことで役者個人へ向かった人々の興味を満たすため、人気が高かったようである。(I)

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