C7 子どもに向けた変容ー桃太郎の場合

『昔話桃太郎』
編著者:南杣笑楚満人(作) 樹下石上(画)
書型:中本 3巻1冊
出版:文化2年(1805)
所蔵:立命館ARC 作品番号:hayBK03-0857.
 
 桃太郎には、「果生型」と「回春型」がある。果生型とは、私たちが慣れ親しんでいる昔話「桃太郎」のように、川から流れてきた桃から桃太郎が生まれるというストーリーのことを指す。一方で回春型とは、『昔話桃太郎』のように拾った桃を爺婆が食べ若返り、婆が身ごもって桃太郎が誕生するというストーリーである。江戸期までは回春型が主流であったが、その後は回春型は一切見かけなくなり、現在語り継がれている果生型になった。そして、子どもに学校の教育題材として初めて1887(明治20)年の『尋常小学読本』に桃太郎が掲載されたが、この時はもう既に果生型であった。
 そのようになった主な理由として、1つは生殖・誕生・婚姻を捨象することで小学校に「相応しい」話型を整えるため、また2つ目は物語の平準化と全国的な浸透を目指したためである。(栁)