E2.8 販売-2 現代語訳
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村田屋の草双紙が大評判なので、店先には人々が山のように集まり、さすがにこれを見通して多めに刷っておいた草双紙も、すべて売り切れてしまい、買い手を待たせておいて増刷し、各丁を綴じるやら表紙を仕立てるやらの大騒ぎとなった。買い手は待ちきれなくて、
「さっきから待っているんだから早く下さいよ。」
とせかすので、
「いや、まだ綴じてません。」
と答えると、
「綴じるのは自分でやるから、刷り上がったものをそのまま下さい。」
と持っていく者がいるものだから、
「おい、こちらの分はどうして下さるんだ。」
というので、
「イヤ、どうも、今刷っているところです。」
というと、
「いやいや、刷らなくても結構です。そのままで下さい。」
と刷る前の紙を持って帰るほどの、繁盛、大いに儲かって気持ちがいい。
買い手「オット、ここへ。」