E2.5製本作業-3表紙掛け 現代語訳

『的中地元問屋2巻』

著者・絵師:十返舎一九

判型:一冊18㎝

出版:享和2年(1802)

出版者:村田屋次郎兵衛

所蔵:国立国会デジタルコレクション

資料番号:2537597

表紙がけの仕事をはかどらせる妙薬はなく、ふと思いついて、作業をしている横で太鼓をたたいてはやし立ててみた。

「掛けよう掛けよう、表紙を掛けるのは、拍子に乗って掛けましょう。[1]かけるは鉤裂(き、頭は(がけ、逃げるは追いかけ、

鍋釜鋳掛け(、囲い者は[2]お手かけ、([3焼きかけ、[4]旦那はやたらと通いかける、そりゃそりゃ掛けるは、表紙を掛けるは、拍子に乗ってかけましょう。ドコドコ、ドコドコ、ドコスコ、ドン。」と、はやしたてると、子供はみんな浮かれ出して、「この表紙掛けは面白い」と、夢中になって飯を食うことも忘れて、夜になっても眠ることもなく精を出して、表紙を掛ける。

栄邑堂村田屋「そりゃこりゃ掛けろよ、表紙を掛けろよ、ドコスコドン、ドコスコドン。」

丁稚①「おいらも何だか踊りたくなったきた。」

とこの丁稚は思いがけないことをいう。

たたき鉦を持つ男「チャンチキ、チャンチキ、スッチャン、スッチャン。」

丁稚②「表紙掛けは面白いな。」

丁稚③「[5]今日は朝御飯食べたっきりだが、ぜんぜん腹が減らないよ。]


掛ける」の語呂合わせを、表紙掛けのはやし言葉に入れた。

この表紙掛けも、次の丁に描かれた綴じも、製本の仕上げの作業。

特に黄表紙や合巻は一冊を五丁単位で綴じるので手がかかった。そのため、女性や子供にまかせることも多かった。

男の髪型の一つ。斜掛本多(は、本多髷を左右どちらかへ斜めに曲げたもの。

鍋・釜などの破れをはんだや銅で修理すること。

[2] 妾。

[3] 焼餅を焼く。

[4] 旦那は妾にばかり通うこと。

[5]子供はとくに腹をすかすもの、夜は早く眠くなるもの、をふざけて逆に言った。

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