A2.2 奈良絵本

『百人一首』上巻
作者:未詳
書型:大本 2巻2冊
成立:江戸前期
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcBK01-0149-01.

 奈良絵本とは室町末期から江戸前期にかけての濃彩色絵入の写本である。室町時代に絵巻から絵入の冊子本に移行したことで誕生した。絵は土佐派のような正系の大和絵のほかに、一時は庶民的な素朴な絵も現われたが、江戸時代に入ると、絵草子屋などが町絵師を使って大量に奈良絵本を製作し、画風も形式化・類型化してきた。大形本・半紙本・横本の三種があった。
 本作は百人一首が頁ごとに歌の詠み手の絵と並べられている。このページで描かれているのは在原業平と藤原敏行である。一見、奈良絵本としては異質に見られるが、絵本においても百人一首は数多く存在しており、江戸時代にも多く出版される。絵巻においては並べられていたものが、本作のように切って絵本として列挙されるのである。(Y)