E3.7 枠を飛び出す

『暁斎酔画』初編
絵師:河鍋暁斎 
書型:中本 3冊
出版:明治17年(1884)
所蔵:大英博物館 作品番号:JIB0317.

河鍋暁斎作『暁斎酔画』には既に紹介した動線や効果線を描く手法が使われていることが見受けられるが、ここで使われる興味深い手法はそれだけではない。ここにはぶんぶく茶釜タヌキの妖怪が描かれるが、その妖怪が茶釜から勢いよく飛び出したことで、なんとその蓋が匡郭を突き破りその外へ飛び出さんとしている。暁斎は他にもぶんぶく茶釜のモチーフについて飛び出す表現を使って描いており、下に参考として挙げた『暁斎画譜』もそれである。ここでは茶釜があちらへこちらへと飛び回りながらお湯をまくため、水しぶきが様々に立ち、それに翻弄される人々が描かれている。このタヌキの妖怪はまだ本性を現していないのかぼかした姿で描かれるが、こちらも『暁斎酔画』と同じく匡郭を飛び出して描かれている。どちらも躍動感があると共に、戯画的で面白い動きが表現されている。現代のマンガにおいてもコマの枠を突き破る表現がみられるが、その萌芽はこのような江戸・明治の匡郭を飛び出して描かく面白く躍動感のある動きの表現なのかもしれない。(戸)

【参考作品】
『暁斎画譜』 初編
絵師:河鍋暁斎
書型:半紙本
出版:万延元年(1860)
所蔵:大英博物館 作品番号:JIB0310

 BM-JIB0310