A2.0 絵本の変遷
 絵本とは通常、絵を主体にした本の総称であると定義されるが、時代によってその意味・内容に違いがあった。ここでは、日本の絵本の歴史的な変遷を述べてみよう。平安期から室町期までは、絵本は「絵手本」つまり、絵師にとっての絵の教科書を意味したことが伺える。一方、中国では、文章と画図で解説した画譜が、画家たちによって描かれていたが、日本に伝来して、和刻本の画譜として流通していた。菱川師宣が出て、大和絵(つまり浮世絵)の絵手本の意味で、「絵尽くし」が作られるが、一方で、秘伝であるはずの絵手本が刊行されるようになり、この二つの系列と、さらにその後に隆盛をみる日本の絵師による画譜が融合する形で、『北斎漫画』のような、現代の子ども向けの絵本とは違う「絵本」が盛んに制作されたのである。この絵本は、絵本が本来持つ機能により、さまざまな分野とも交流しながら絵入本を展開する。
 さらに、絵巻から奈良絵本、草双紙とつながる物語世界を絵によって描いていく絵本も行われ、これが明治草双紙に展開していく。子ども絵本は、西洋からの影響も受けつつ、これらの日本の草双紙の流れを吸収して出来上るのである。(a.)
 
【参考作品】
『北斎漫画』十三編
絵師:葛飾北斎
書型:半紙本 15編15冊
出版:嘉永2年(1849)
所蔵:立命館大学図書館(西園寺文庫) 作品番号:721.8/KA 88.