B4.1 名所図会

『東海道名所図会』 巻六
編著者:秋里籬島
書型:大本 6巻6冊
出版:寛政9年(1797)
所蔵:立命館ARC 作品番号:hayBK01-0012a.

 まず、この「図会」は文字通り図(絵)を会わせたものということを念頭に置いておきたい。名所図会は名所記と違い、その描いた土地で起こった出来事や伝説のようなことを説明として加えているため、地誌としてあった名所記よりは民族性や地域性が高いということになる。そうすると、これが成立する段階には、製作者側も読者側も絵がもっと絵と文章が互いに嚙み合わさっていれば良いのではないかという疑問があったことが想像できる。したがって、名所記より、自分たちの理想に近づいた結果が「図会」ということになる。これの製作時期は名所絵本の中でもかなり早く、名所図会で活躍した秋里も早いうちから名所記の在り方について疑問を持っていたのだろう。ここに展示した『東海道名所図会』は最も初期の『都名所図会』とは時期がずれるが、東海道が題材になるため長編になる。
 この名所図会は上方の都名所図会や摂津名所図会、江戸の江戸名所図会や東海道名所図会など図会としての作品は多岐にわたる。裏を返せば、それだけ多岐にわたる図会が生み出された背景には、当時の人がそれを見て楽しんだり実際に描かれている名所へ旅行をしたりと、娯楽を楽しむ文化、楽しめる風潮が民衆に広まっていたのである。(n)