F1.3 校合本

(校合摺本)『於六櫛木曽仇討』
絵師:歌川豊国、作者:山東京伝
書型:中本、3巻合1冊
出版:文化4年(1807)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcBK03-0125.

 検閲をクリアすると、版木に版下を裏返しに貼り付けて彫りあげ、校合摺を行う。校合摺には2種類の役割がある。校合という言葉には、基準となるものと相違を照らし合わせるという意味がある。まず相違を照らし合わせる、という意味での校合摺について触れておく。
版木に彫り間違いがあった場合、作者が彫師に対し、版木の修正を指示するために摺る「校正摺」を指す校合摺がある。校正摺で誤りがなければそのまま刊本となるが、版木に彫り間違いがある、最後の微調整で絵に手を加えるなどの理由で校正摺を修正する場合、校正摺に作者が朱で修正を入れ、彫師が彫り直しをする。もし版木に彫り間違いがあった場合、初めから版木を彫り直すのではなく、「入木」といって誤っている部分にのみ正しく彫られた木を版木に埋め込むということをする。このように修正を繰り返して、主版が作られていく。(詳しい主版の作成はF1.2で触れてある)もう一つの校合摺の役割は、色版の版下を作成するためである。普通、黄表紙などの草双紙は墨一色で摺られるが、表紙に色が使われることがある。具体的にどのように色版の版下を作るかというと、使う色の数だけ摺られ、絵師によって「色さし」といって色の指定がされて、色版の版下が完成する。(色版の作成は別の記事で触れる)画像で挙げている『於六櫛木曽仇討』は、校正摺を指す方の校合摺を本にしたものである。
また校合摺は多くの場合、彫師によって摺られた。これは少数、かつ「墨版」であるため、あまり摺の技術を必要としないものであった。もともと、彫と摺は兼業されていた。しかし錦絵の登場以後、浮世絵版画は色の重ね摺りにとどまらず、木版画固有のきわめて高度な再現技術の誕生により、彫を専門にするものと、摺を専門にするものに分かれていくのである。(野)

arcBK03-0124(刊本)『於六櫛木曽仇討
絵師:歌川豊国、作者:山東京

書型:中本、3巻合1冊

出版:文化4年(1807)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcBK03-0124.