B5.0 風俗絵本とは

 風俗絵本は、浮世草子に使われていた挿絵が次第に独立して、絵本に変化していったという説がある。浮世草子の娯楽性の高さに加え、絵によって教訓や情報をわかりやすく伝えられるようにした。そうして風俗絵本は、西川祐信ら、浮世絵師によって多くが描かれた。祐信の制作作品数は圧倒的であり、江戸の浮世絵師たちへの影響力もきわめて大きかった。一方江戸では、「絵づくし」から始まった菱川師宣の絵本が、吉原や芝居などの風俗を写すことから始まったため、場所を定めた風俗絵本が描かれる傾向がある。風俗絵本は、当世風俗を描くフィールドとなったばかりでなく、古典や和歌、狂歌や芝居、身分の高下といった時空を超えた対象をも描き始める。女性の風俗でいえば、そこには、化粧や髪型、着物のデザインなど当世の流行が描き込まれた。現代のビジュアル雑誌と同様な娯楽性を得て、当時の人々にうったえるメディアとなったのである。(na.)

【参考資料】
『日本永代蔵』 巻1
作者:井原西鶴
書型:大本  6巻6冊
出版:貞享5年(1688)
所蔵:大英博物館 作品番号:JH045.