D2 古典物語の出版と絵本化

『源氏物語』巻七
編者:山本春正
書型:大本 60巻60冊のうち54冊
出版:承応3年(1654)
所蔵:立命館ARC(藤井永観文庫) 作品番号:eik2-0-51-07.

 古典文学の出版活動は、古活字版『伊勢物語』が早いが、すでに挿絵が加えられ、読者の理解を助けた。『源氏物語』の場合、慶安3年(1650)に蒔絵師の山本春正が、松永貞徳の指導のもとに編集したもので、54巻に226図もの挿絵を加えた。これ以前の源氏物語絵は、巻ごとに一図が描かれるの普通であったから、新たな場面を描いた源氏絵が一気に増えることとなった。まさに源氏物語が絵本化したのである。このように、江戸時代にはすでに古典語となっていた平安期の言葉は、時代が進んだ後世の人たちにも読まれるようになるのであった。つまりは、古典を読むきっかけとして絵が浸透していったのである。

本作は山本春正による『源氏物語』の七巻であり、紅葉賀の物語に挿絵が入れられたものである。この場面は光源氏が、頭中将と共に青海波を踊っている様子が本文の横に描かれている。このようにそれまでは、文字のみで読まれていた古典的な物語が挿絵が入ることにより従来よりも広い読者に理解されうるものとなったのである。(Y)