Report
  1. HOME
  2. 活動報告
  3. イベント情報
  4. 国際共同研究プロジェクト「上方文化サロン:人的ネットワークから解き明かす文化創造空間 1780-1880」の研究成果を大英博物館で特別展示

 [書込]

国際共同研究プロジェクト「上方文化サロン:人的ネットワークから解き明かす文化創造空間 1780-1880」の研究成果を大英博物館で特別展示
2024年5月 9日(木)

ukri_1.jpg

この度、イギリス・ロンドンにある大英博物館では、日本学術振興会(JSPS)および英国研究・イノベーション機構(UK Research and Innovation, UKRI)の助成による国際共同研究プロジェクト「上方文化サロン:人的ネットワークから解き明かす文化創造空間 1780-1880」の研究成果を紹介する1年間の特別展示が開催されています。

ukri_9.jpg

立命館大学アート・リサーチセンター(ARC)センター長の赤間亮教授と大英博物館アジア部学芸員の矢野明子博士を研究代表者とするこの研究プロジェクトは、大英博物館、そして日本各地に所蔵されている5,000点を超える作品を分析することで、前近代日本、特に1780年から1880年頃の京阪神地域で発達した“上方文化サロン”や文化創生における集団制作(合作)システムの文化的・社会的影響を調査・分析し、高度な文化成熟が成立するメカニズムを解明することを目的としています。

本プロジェクトでは、ARCが構築・運営するオンライン型研究システム「上方文化人総合データベース」に、これらの作品を登載しましたこのシステムは、研究活動に活用できる前近代日本文化研究の新たなポータルとして、複数のデータベースにより構成されています。将来的に同様の形で異なるテーマのポータルを追加することも可能です。

→ARCバーチャル・インスティテュート:「上方文化サロンとネットワーク 1780年~1880年」

COVID-19の課題に取り組むこのプロジェクトは、立命館大学アート・リサーチセンター、関西大学、京都国立近代美術館、大英博物館、ロンドン大学東洋アフリカ研究院(SOAS)の研究者チームから構成され、オンライン・デジタル技術を駆使した日英共同研究の効率的な進め方の模範となっています。

また本プロジェクトは、国際的な研究環境の中で日英の若手研究者にデジタル・ヒューマニティーズの基礎を学ぶ機会を提供し、日本研究の若手研究者育成に貢献しました。


本研究は、日本学術振興会国際共同研究事業英国との国際共同研究プログラム(JRP-LEAD with UKRI)[課題番号JPJSJRP 20211708]による支援を受けたものです。

実施期間: 2021年12月1日~2024年11月30日(3年間)

関連記事:https://www.britishmuseum.org/research/projects/making-art-together-japan 



【大英博物館からのリリース】

京と大坂都市の華やぎとサロン文化 1770年~1900

三菱商事日本ギャラリー(93・94室) 入場無料
前期:2024年4月6日~10月6日(予定)
後期:10月10日(予定)~2025年3月下旬

江戸時代(1603-1868)の京都と大坂は、将軍のお膝元である江戸と並ぶ二つの重要な都市でした。京都は日本の首都であり、天皇や公家が住んでいました。大坂は商業の一大中心地でした。江戸時代の日本は比較的平和で、教育や文化が栄えました。

京都、大坂、江戸では、芸術や学問がいちじるしく発達しました。文化や科学の活性化は、日本国内での創意工夫のみによって起こったわけではなく、江戸時代のほぼ全期間にわたって日本唯一の国際交易の港であった長崎を通じて入ってきたモノや情報、ひいては広い外の世界との接触がもたらした結果でもありました。

もっと身近なところでは、市井の人々は―プロ・アマうちまじって―文化的な趣味、例えば詩歌や絵画、音楽、園芸、茶道などにいそしみ、同じ趣味を共有する人々とグループを作ってそのような活動を楽しみました。このような文化的空間を、この展示では「サロン」と呼んでいます。そこでは、身分制度による社会的階層の違いはひとまずおいて、グループのメンバー同士は対等な関係で交流をしました。この精神によって、当時の日本社会には豊かな創造性が花開くことになりました。

1860年代以降、日本は大きな政治的混乱と変革を経験しました。それでもなお江戸時代以来のサロン文化は、少なくとも20世紀の初頭までは連綿と続いていました。

大英博物館のコレクションには、この文化的サロンの時代に京都や大坂で制作された絵画、版画、版本、工芸品が多く含まれています。ここに展示された作品からは、当時の美意識や芸術的嗜好、人々がともに文化活動を楽しむさまを見てとることができます。

展示は主として下記のセクションで構成されています。
京都―伝統と革新の都
大坂―商業と進取の都
長崎―世界への窓口
サロン文化―趣味と合作
俳諧・狂歌と摺物
文人的理想
煎茶―清雅な愉しみ

この特別展示は、3年間にわたる国際共同研究プロジェクトの成果のひとつです。プロジェクトは、イギリスの経済社会科学研究評議会と日本学術振興会からの合同支援を受けています。

また、展示にあわせて、豊富なカラー図版と論考を収録した書籍、Salon culture in Japan: making art, 1750 to 1900が大英博物館出版部から出版されます。価格は30ポンド、2024年6月刊行予定です。