F2.3 発禁本

『黒白水鏡』
絵師・著者:北尾政演石部琴好

書型:中本
出版:寛政1年(1789)
所蔵:国立国会デジタルコレクション 作品番号:8929946  

 黄表紙が発禁本になった事例をみていきたい。
 享保に好色本の出版禁止の規制があり、更に寛政二年に松平定信により規制が強められる。好色本、草双紙などが規制されるようになり、その影響を受けた作品の一つとして、『黒白水鏡』という黄表紙がある。内容として書かれているのは、田沼意次の失脚を滑稽に風刺したもので、天明期間に出版されている。が、天明では絶版にはならなかった。後の寛政元年に絶版及び作者への処罰が下されたのである。
 
その理由としては、この黄表紙が出回っていた天明6年から寛政元年までは松平定信の地盤固めの時期であり「反田沼運動」を手助けするものとして見逃されていたことが考えられる。ところが、寛政期に入り体制が盤石なものとなると用済みになったので、絶版という処罰が下ったのである。
 
風刺性の強い面をもつ黄表紙が出版出来るかどうかは、当時の検閲体制や政治と深く関わりを持つのである。(ymd)