E3.0 三次元を二次元に取り込む絵本

 絵本はあらゆる物を取り込んで表現することができるメディアであるが、あくまでも二次元で表現しなければならない。絵師達は、さまざまな工夫によって制約を乗り越えた。例えば、雲英を使って反射の効果を加え、幻想的な蛍の飛ぶ様子を表現したり、海の砂が輝いている様子を表現した。
 また、常に錦絵摺りを絵本に使うことはできないため、光や影の表現は、描線で表現せざるを得ない。本コーナーでは、光と動きの表現がどのようにくふうされているかを事例によって紹介したい。光を光線の線として描いたり、フレームに光源を置いたり、敢えて光ではなく影を描くことで光を表現する技法を紹介できるだろう。動きの表現としては、動線を描く方法で、効果線を加えて、激しさを表現する方法など現代のマンガと遜色ない手法がみられる。
 さらには、フレームを突き破るような意表を突く表現など、現代の漫画と比較することでさらに日本の絵本の面白さを発見できるだろう。 (戸a.)

【参考作品】
『蛍狩り』
絵師:長喜
判型:大判錦絵
出版:寛政7年(1795) 
所蔵:大英博物館 作品番号:1945.11-01.0044.