D8 教訓と修身の教科書

『錦絵修身談』巻二
編著者:月岡芳年(画)山名留三郎(編)
書型:半紙本 6巻6冊
出版:明治17年(1884)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcBK02-0301.

 明治時代「学制」下で使用された初期の修身教科書は欧米の翻訳書が中心で、のち、儒教主義による編集が主流となった。初期の「修身教科書」は生徒に道徳規範に馴染んでもらうため難しい抽象文を避け、なるべく物語形式にして伝えるというのが方針であった。江戸時代に培われた文字だけでは解りづらかった事柄や事物を絵を入れることで理解しやすくさせる仕組みは、明治時代の教科書にも活用された。1890年の「教育勅語」により検定制度が厳しくなると国定修身教科書が登場し、他の修身書は不要となる。その後の修身書は挿絵が入っていても物語り形式ではなく、固定化されとてもつまらないものとなる。
 本作は月岡芳年によって様々な挿絵が書かれており、道徳教育のための説話を中国・西洋の物語りでまとめられている。この見開きは、道徳教育に活用される説話のひとつであり、ここでは「エリーレーン」の仁と題し十三歳の少年が列車の事故を防止した話が描かれているが、その少し前では、楠木正成の忠と題した同じような構図の見開きがある。(Y)