C9.1近現代の絵本

『えんとつ町のプペル』
著者:にしのあきひろ
出版:平成28年(2016)
出版社:幻冬舎

 近現代の子ども絵本の特徴として、絵本をアニメ化・映画化するという点が挙げられる。なぜ絵本をアニメ化・映画化するのか。考えられるのは、映像メディアの多様化・揺らぐ価値観・長引く景気の低迷下にあって、児童図書出版の衰退が深刻化しているからである。現在の視覚表現の世界は、新たなメディアが相互に触発し合いながら、目まぐるしく展開している。
 よって現代の絵本に求められるのは、絵本でなければ表現できない世界はどのようなものであるか、また絵本の独自性を見据えながら、その表現を深く追求することであると言えよう。絵本には、紙媒体であることの良さももちろんあるが、時代の変遷に合わせて形を変えていくことも重要である。絵本表現の可能性はおおいにある。
 例えば、九十年代以降は写真やCGによる表現も加わり、従来の絵本の常識にとらわれない新しい傾向の作品が多くみられるようになる。さらに絵本に対する意識の変化・転換は、従来絵本とは共通の基盤を持たなかった現代アートをはじめ、イラストレーション、グラフィックデザインなど、異分野の表現者たちの絵本製作への積極的参画をまねき、絵本表現の幅はさらに広がりを見せている。(栁)

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