B5.3 芝居風俗

『絵本三家栄種』
絵師:北尾重政(画)
書型:中本 3巻1冊
出版:明和8年(1771)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcBK02-0030.

 ここでいう「芝居」は実際の演劇のことではなく、芝居に関わる人の風俗のことである。つまり、歌舞伎役者をはじめとする芸能人が興した風俗である。現在でも、有名タレントが独自にプロデュースしたお店やブランドが立ち上げられることがあるが、それは何ら新しいことではなく、江戸時代にすでに行われていた。
 ここに展示した『絵本三家栄種』では、市村、瀬川、中村、高麗屋(=松本幸四郎)、佐野川、森田といった有名な歌舞伎役者が元になったお店が描かれている。またそれらのお店で売られているのは整髪料や白粉、香水などの身だしなみを整えるものであったり、お茶屋や蕎麦屋などの飲食店であったりと様々である。こういったお店がそれを利用する客とともに描かれることで、いかに芝居が江戸の庶民に親しまれていたか、また、それらの役者が及ぼす影響が非常に大きかったことがわかる。さらには、絵の中で描かれているお店も繁盛しているが、絵本にお店を取り上げることで一種の宣伝にもなっていたと考えられる。(n)