E2.0 序文

〈序文〉

[1]商売は草の種」というが、まさに草双紙の売れ行きは話の種(趣向)次第。書いても書いても尽きることがない、[2]浜の真砂ほどのある洒落をいかに使うのかが肝心。ふざけまくって出放題のアイデアを。「[3]金の生る木」の版木に彫りつけて、小刀細工の彫り師の銭もうけにもなれば、われら作者の「[4]ほまち銭」にもなる。なんといっても趣向さえよければ出版元の金箱には山吹色の小判がたまるという、[5]黄金色の黄表紙はやはりおめでたいものと、ちょっとばかりお祝いの言葉として筆を執った。

                                         [6]孟陽      十返舎一九㊞



[1] 「世渡りは草の種」のように商売にはさまざまある、を草双紙にかけた。草双紙の種=趣向もいろいろある。

[2] 数が多く数え切れぬたとえ。洒落・ふざけの仕方でいくらでも草双紙はできる。

[3] 金を生み出す木、ここでは版木を彫ることから草双紙が生まれてそれが売れて儲かること。

[4] 帆侍物。船乗りが規定の積み荷以外に自分たちの収入になる内密の荷を積むこと。転じて臨時の収入。

[5] 小判の色と黄表紙の色をかけた。

[6] みずのえいぬ。享和2年

  • 投稿日:
  • by
  • [編集]