E4.0 見立てとやつし

絵本の「絵」の中で取り上げられる画題の面白さを表現したものに「あるものを別のものになぞらえる」という手法がある。
その最たるものが「見立」と「やつし」である。これらは「あるものを別のものになぞらえる」という点で共通しているが、「見立」があるものを連想によって別のもの―これは人でも物でも何でもよい―になぞらえることであるのに対し、「やつし」は権威ある者を現代風にアレンジして表すことで、この場合は人間同士にしか結びつかない。具体例を挙げると「見立」は落語家が扇を箸やキセルにみせるようなことであり、「やつし」はここに参考として紹介する『姿絵百人一首』のように百人一首の歌とその詠み人を当世、この場合は江戸時代風にやわらげて描くことである。
さらに見立の中には様々な種類があり、本コーナーではその中で「絵兄弟」「なぞらえ」について紹介する。
これらの表現は絵本のみに限らず演劇など様々な分野で日本人が取り入れてきた表現である。それほどまでに親しまれてきたのは、別のものになぞらえることがそれをより親しみやすくすると同時に、別のものや作品へと思考が広がっていく、言わば思考の旅が楽しめることも理由に挙げられるのかもしれない。(戸)

【参考作品】
『姿絵百人一首』上巻
絵師:菱川師宣
判型:半紙本 3巻3冊
制作:元禄8年(1695)
所蔵:立命館ARC 作品番号:eik2-0-74.

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