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「日中文化交流と人文学の新たな座標」
清華大学と立命館大学との実りある交流の場・新たな絆の構築へ
2021年6月 2日(水)

2021年5月22日(土)に「日中文化交流と人文学の新たな座標」をテーマとした、第二回 立命館大学-清華大学 国際学術シンポジウムが開催されました。

本シンポジウムは、中国・清華大学人文学院と立命館大学大学院文学研究科、立命館大学アート・リサーチセンター(以下、ARC) 国際共同利用・共同研究拠点(ARC-iJAC)の共催で、立命館大学アジア日本研究推進プログラム「『アジア芸術学』の創成」の後援を受けて行われました。

開会にあたり立命館の仲谷善雄総長は、今回のシンポジウムが清華大学や中国の人々と立命館との研究、学術交流を促進し、友好を深める絶好の機会であると挨拶しました。

続いて、清華大学人文学院 倪玉平副院長が、パンデミックなどの危機的状況や複雑な課題の中で、自然科学に加えて人文科学が重要であることを強調し、両大学の包括的パートナーシップを深めていきたいと話しました。

両大学の研究実績紹介
デジタル・ヒューマニティーズの視点や研究活動についての発表

くずし字翻刻システム 立命館大学の金子貴昭准教授は、資料の保存・修復からデジタル化までの流れを一元化した「ARCモデル」、オンライン研究空間の「ARCリサーチ・スペース」を紹介しました。
また、デジタル化されたコンテンツを研究に活用するための浮世絵ポータルデータベース古典籍ポータルデータベース、演劇の上演関係資料を収録する番付ポータルデータベースなどの研究資源別に専門性を持たせたポータルデータベースの運用についてもお話しがありました。デジタル・ヒューマニティーズの研究を支援するためにARCが運用している強力なツールである「くずし字翻刻システム」は、くずし字に使われる草書体の解読支援機能をAIに持たせた解読学習・教育支援システムです。このシステムは、くずし字解読の人材育成システムとしての役割も担っています。
現在ARCでは、原資料の取り扱いからデジタル化、データベース構築から成果発信まで、研究者が主体となって取り組めるオンライン研究体制を整え、ボーンデジタル型の循環型研究を実現できるよう、研究実践とノウハウ開発に取り組んでいることが示されました。

ARC地図ポータルデータベース立命館大学の矢野桂司教授は、洛中洛外図屏風のポータルサイトと比較システムについての研究発表を行いました。
現在、国内外で約170もの洛中洛外図屏風の存在が確認されており、これらを一覧できる洛中洛外図屏風ポータルデータベースの構築に取り組んでいること、さらに、複数の洛中洛外図屏風と当時の古地図や現在地とを比較することのできる 洛中洛外図4画面比較 の構築を行い、洛中洛外図屏風の変遷を明らかにすることを可能にしたと述べました。
また、国内外の図書館・博物館などが所蔵する日本で作製・出版された過去の地図・絵図などの古地図を、インターネット上で検索、閲覧、分析することができる、WebGISベースでのポータルサイト「Japanese Old Maps Online」についても紹介しました。
日本の古地図を横断的に検索できるARC地図ポータルデータベース、誰もが簡単に現在の地図との重ね合わせを可能にするジオリファレンス・システム 日本版Map Warper、そして、それらの古地図をWebGISで表示・分析・公開するJapanese Old Maps Onlineなどの開発を行っています。

清華大学の王成教授は、明治・大正の「修養の時代」に合わせて、近代日本における『菜根譚』の受容について述べました。明治十年代から、社会での成功のために、精神の「修養」や人格の形成が大きくクローズ・アップされるようになり、日本社会の文化現象となりました。『菜根譚』は修養書として評価されており、江戸時代から読まれてきた『菜根譚』は、明治期には煩悶に苦しむ人々を慰め、心の安らぎを与える修養書として、翻刻だけでなく、注釈書も多数出版され、ベストセラー的なものだったと紹介しました。

清華大学、立命館大学をはじめ、大学や研究機関から多くの方々が参加し、活発な議論が行われました。

多様なテーマでの新しい研究成果が生まれることに期待

アート・リサーチセンター長細井浩一教授シンポジウムの最後に、アート・リサーチセンター長である細井浩一教授は、両大学がデジタル・ヒューマニティーズ研究に力を注ぐことで、デジタル技術の力を借りて、さらに多様なテーマで新しい国際共同研究のスタイルが生まれることを期待していると述べました。

シンポジウムに参加した仲谷総長は、「データベースやデジタルアーカイブを使って、多くの人が日本文化を研究していることに感銘を受けた」と述べ、これらのアーカイブから多くの新しい研究成果が生まれることに期待を寄せました。

シンポジウムの企画・運営を主導した西林孝浩教授は、講演者、参加者、関係者の皆様に感謝の意を表し、「人文学を出発点として、清華大学と立命館大学の研究交流がさらに深まり、デジタル人文学など他の分野にも広がっていくことを強く期待している」と述べました。

共同学術シンポジウムとして二回目の開催となった本シンポジウムは、清華大学と立命館大学の協力関係の強化につながり、双方の人文学とデジタル技術研究の進歩を示す有意義な機会となりました。

※新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、本イベントはオンライン開催となりました。