B5.5 風景の中の人々

『絵本江戸爵』 中巻
著者:北尾重政(画) 蔦唐丸(編) 朱楽菅江(序)
書型:半紙本 3巻3冊
出版:天明6年(1786)
所蔵:大英博物館 作品番号:JIB0136.

 B4.3では名所の中に風俗が描かれていったとあったが、こちらは、B5.4 のような時間軸の風俗の中に名所が描かれるようになっていった。つまり、相互にそれらが交わりはじめていたことがわかる。これらが交わることで、風俗・民俗がより豊かに描かれることが可能になったのである。さらに言えば、この風俗が絵本として縦と横のつながりで描かれることによって、誰がどこでいつどんなことをしていたかが可視化できるようになった。また、年中行事等の時間的な制限がない場合、季節に沿う必要もない。この『絵本江戸爵』では、貝を拾う者、蕎麦を食べる者、炬燵で書をしたためるものなど、様々な場面と人が描いている。このように、時間軸と空間軸のどちらに重点があるかでもその絵本の内容は異なるのである。(n)

【展示作品】
近世日本風俗絵本集成 昭和54年の複製本