投稿記事にコメントが付けられていきます。
2007年12月 5日
VAST2007 (尹新)
本拠点の学内研究協力者で、立命館大学総合理工学研究機構ポスドク研究員(田中弘美研究室)の尹新さんからご参加になった国際会議、VAST2007(イギリス、ブライトンで開催)についてご報告をいただきました。ご本人の許可を得て、本ブログに転載させていただきます。 (以上、管理人)
======================
グローバルCOEにご関係の皆様:
情報理工の田中弘美研究室の尹新と申します.
11月27日~29日にVAST2007との国際会議で発表を行いました.この会議がEUのじんもんこんと言える国際会議で,GCOEと深く関連している発表が多いので,報告させでいただきます.
まず,この会議のサイトは http://aranea.brighton.ac.uk/vast2007/index.php です.
今回は,能装束2件と浮世絵1件の研究について発表しました.具体的な発表は以下のようになりました.
1,Acquisition, Synthesis and Rendering of Large-scale and Complex Bidirectional Texture Function of Ancient Japanese Noh Costume Fabrics (28日午後2時30分からのセンション).
2,Efficient and Realistic Rendering of Noh Gossamer Costume (29日午前8時45分からのセンション).
3,Representing Appearance of Ancient Japanese Drawing Named Ukiyo-e (29日午前11時00分からのセンション, 会議のサイト上の論文名は古い論文名となっています).
発表したときに,1スッライトで立命館大学のGCOEプロジェクトを簡単に会議の参加者に紹介しました.
この会議に関する論文は,http://www.eg.org/EG/DL/WS/VAST/VAST07 と
http://www.epoch-net.org/index.php?option=com_content&task=view&id=139&Itemid=225 (VAST2007論文については近うちに,このサイトからご覧になれます).
(※続きは下の ⇒質疑応答へ をクリックしてください。)
この会議は90%以上の論文はEUの諸国の論文です.EU以外の国はあまり参加しませんようです.本研究室から三回連続で参加しましたが,EU以外の参加者が減少している傾向があります.今回には,EU以外には,4カ国からの発表がありました.
この会議はEUの文化財の主な研究プロジェクトを反映しています.多くには,バチャッル空間で,昔のものと町などを再現することやバチャッル博物館で文化財を展示することに関する研究を行っています.最新のプロジェクトは多くのEUの文化財(建築物を含め)を3Dディジタル化し,共通のデータベースとして使う予定があります.このため,だれでも,簡単に使えるソフトウェアで,3Dデータを管理できる研究を求めています.今回の3D Powerpiontの発表はその一部と思っています.
また,一般の方が文化財に興味をもつように,ゲームみたい,自動的に物語を生成し,3D文化財展示システムを開発する傾向もあります.EUは,文化財関する新たな技術を推進するために,毎年,3-50M Euro の研究費を使っていると言われています.この以外には,文化財に関する経済効果などの研究も力を入れて取り込んでいます.例えば,新しいシステムは,博物館の観客にの影響などの調査や,地元の経済発展の評価なども行っています.
また,EUの各国が役割分担の形で,研究進めている印象がありました.例えば,Italyは3D計測機械を開発し,Franceはマルチバントで画像処理の研究を しています,UKはマルチバントのディスプレイを用いて研究を進めています.今後,この三つの研究者は連合して,何にか新たな研究をしたいという話がありました.
VASTの発表からみると,こちらでしている無形文化財や皮膚触覚を提示できる展示システムなどに関する研究発表は見当たらないので,この意味で,こちらでしている研究は新しさがあり,将来的に,何にかの役割を立つことが可能と思っています.
また,直接に研究と関連している情報も,手に入りました.ひとつは,3D形状計測装置です.多くの研究は,こちらの研究と同じい,VIVIDなどを用いて,計測を行います.それ以外に,手持つスキャンナで従来より,精度などが落ちるですが,早い速度で,3D形状の統合を完成できます.近い将来に,精度と速度が両立できる3Dスキャンナが商品化可能性があると気がします.それ以外には,3D形状と2D手書き画像を比べることで,歴史の謎を解く発表もありました(Using 3D Scanning to Analyze a Proposal for the Attribution of a Bronze Horse to Leonardo da Vinci ).これは,一つの3Dデータが役を立つところと思っています.
以上に,簡単な報告いたしますが,みなさんの研究に何にか役を立つことができれば,幸いです.
コメント(1)
コメントする
尹さん、御報告どうもありがとうございます。
まず、読んで思ったのは、日本とヨーロッパとでは、文化財研究や博物館におけるコンピュータ利用の発想が異なること、です。ヨーロッパの方が、発想が奥深いというか、広がりを持っています。
CH研究会・じんもんこん、などで、これまで、博物館・美術館でのコンピュータ利用について、たくさんの研究発表に接してきました。その多くは、収蔵品の、データベース化にかかわるもの、でした。
こまかな技術的な問題点については、また後ほど、ゆっくり考えて書きます。
ただ、その技術を考えるとき、そもそも博物館・美術館は、何のためにあるのか、という、社会的な意味づけが問題であると、思っています。
たとえば、アメリカの、スミソニアン(Smithsonian)ですが、このHPのURLをみると、「edu」になっています。つまり、教育機関という位置づけなのでしょう。(誤解かもしれませんが。)
イギリスの大英博物館は、「org」。
日本の国立の博物館は、「go」。
このあたり、それぞれの国における、博物館・美術館の社会的意味のちがいが反映している・・・と考えます。そして、何のために、その技術があるのか、これを考えることも、私は必要だと思っています。
當山日出夫(とうやまひでお)