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2009年6月 9日

第51回GCOEセミナー特別講義

ホノルル美術館日本美術コレクション―デジタル・アーカイブとデータベース公開について―

竹村 さわ子(Sawako Chang Takemura/ホノルル美術館ロバートランジ財団東洋美術部日本美術イメージ・プロジェクト主任/准研究員)

【概要】
本講義の講師である竹村さわ子氏は、ホノルル美術館アジア美術部プロジェクト主任及び准研究員として浮世絵イメージングプロジェクトの活動を行っている。
本講義では、ホノルル美術館の日本美術コレクションについてその概要と特色について、また現在美術館で進められているプロジェクトの目的と具体的な内容、今後の予定についてご報告いただいた。

ホノルル美術館は、アナライス C.M. クック婦人のコレクション約4000点を基に創立されたものであり、クック婦人は美術館のコレクションを充実させるため世界中を巡り、精力的に活動を行った。1950年代後半には小説家であり、熱心な浮世絵コレクターでもあったジェームス A. ミッチェナー氏のコレクションが寄贈され、美術館の浮世絵コレクションはアメリカで三番目に大きいものとなった。また、2003年には故リチャード・レイン氏のコレクションが収蔵されることになり、本美術館の日本美術コレクションは非常に充実した幅広いものとなっている。

2003年にはこれらのコレクションのうち、浮世絵・現代版画を対象とした「浮世絵イメージングプロジェクト」がロバート F. ランジ財団基金により開始された。全作品をデジタル化し、データベース公開を行うというものである。本プロジェクトは、より多くの人にコレクションのことを知ってもらうこと、全作品の整理、作品の不必要な露出を避けることなどを目的としている。

プロジェクトの流れとしては登録されていない作品について、データ入力を行い、資料ナンバーを登録、作品の撮影をした後、IT部によってレコードが更新される。
現在までに約15000点の撮影が終了している。さらに、版本や中国・韓国の絵画の調査・撮影も進められた。

これまで美術館内の収蔵品データベースはFileMakerを用いていたが、外部公開にむけてギャラリーシステム社のTMS(The Museum System)に乗り換えた。TMSはボストン美術館やメトロポリタン美術館などアメリカの主要美術館で用いられているシステムである。

美術館では2009年12月よりデータベース公開を開始する予定である。スタート時にはまず4000点の作品の公開から始めるが、随時作品を追加していくことになっている。
浮世絵イメージングプロジェクトの活動として、今後はデータベースの充実、研究者との共同研究、レインコレクションの整理と撮影、展覧会の開催などを進める予定である。

【質疑応答】
(1)TMSに関するアメリカの美術館の動向(鈴木先生)
(2)ヨーロッパ美術館におけるTMSの利用(松葉さん)
(3)IT部との連携とTMS操作の難しさについて(倉橋さん)
(4)デジタル画像公開の基準(金子さん)
(5)春画・艶本非公開の理由について(倉橋さん、石上)

(1)アメリカでは美術館のデータベースシステムとしてギャラリーシステム社のTMSが独占的な地位を確立している。TMSの特長の一つとして日本語や中国語など様々な言語が使用できる点があるからだ。ただし、あらゆる美術品を一つのシステムで検索するため、浮世絵に必要な検索項目が設定されない点などが難点である。

(2)TMSはライデン国立民族博物館やアッシュモリアンなど、ヨーロッパの美術館でも使用されている汎用性の高いソフトである。ただし、TMSは操作が難しく、技術的な点で美術館同士の情報共有が必要となる。TMSには共有のフォーラムがあり、そこで技術的な問題点を書き込み、解決方法を提案するというかたちがとられている。

(3)基本的にスタッフが入力したデータをIT部に渡し、それをデータベースに更新するという流れである。データベースにアップする上で問題がある場合は、質問(3)でも触れたように、TMSのフォーラムで解決策を得るということが多い。

(4)美術館の方針として美術館のデータベース上で公開する画像は、美術館スタッフが撮影したものに限るというものがある。本講義報告者である石上は2003年よりレインコレクションの撮影を行ってきたが、その画像はデータベースでは公開されず、美術館スタッフや研究者間の情報共有のために用いられる。また、美術館のデータベースでは春画・艶本の公開は行えないため、ARCのWEB上で制限付で画像公開を行うことを検討しているところである。

(5)春画・艶本が公開できないというのは、美術館の方針ではなくロバートF.ランジ財団基金が決めるところである。ただし、データベース上では非公開の扱いになるが、出版物として刊行することは可能であり、カタログなどを出版することで春画・艶本コレクションの普及を図る予定である。

 

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