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2007年12月23日

人文科学とデータベース

第13回公開シンポジウム「人文科学とデータベース」(2007年12月22日、奈良女子大学)について、いろいろ意見や感想を書き込む項目です。みなさん、よろしくお願いします。

コメント(5)

當山日出夫 : 2007年12月24日 13:15

12月22日の奈良は雨が降ってとても寒い日でした。その寒い中、合計すれば数十名の参加者で、非常に、知的刺激に満ちた研究会でした。

発表者のメンバーにおいても、遠くからは、及川昭文さん(総合研究大学院大学)・北村啓子さん(国文学研究資料館、あいにく事情があって欠席でしたが)それから、坂田年男さん(九州大学)、などが集まり、活発な研究発表と議論が交わされました。

また、特別講演では、奈良文化財研究所の中村一郎さんの、「キトラ・高松塚古墳のフォトマップ撮影と画像の保存活用」の話しがあり、これもまた、非常に興味深いものでした。

中村さんは写真の方の専門家ですから、(つまり、考古学が専門ではない)、その立場から見た、考古学資料の写真撮影の技術や問題点の現状、また、写真を撮影するうえでのいろんな工夫について、語っていただきました。

最後に簡単な質疑の時間がありましたので、私が手をあげてきいてみました。

私:色空間は、sRGBすか、AdobeRGBですか?

中村さん:AdobeRGBです。

即座に、このように答えがかえってくるというのは、やはり、プロのカメラマンだと感じました。

さらに、

私:通常の画像デジタル・アーカイブでは、コダックのカラーチャートが写してある。しかし、これは、デジタル画像・色彩の世界はでは、何の役にもたたない。むしろ、18%標準反射板でも写してあった方が、役にたつ。いかが、お考えでしょうか?

中村さん:埋蔵文化財写真技術研究会があって、そこで、集まって研究している。今後は、写真撮影の技術的な面(ワークフロー)についても、情報発信していきたい。

以上のやりとりは、たまたま、私の個人的興味(デジタルの色彩学)から、質問してみたものです。さすがに、奈良文化財研究所だけのことはある、と感じた次第です。

考古学資料に限らず、各種の画像データの、デジタル・アーカイブが進行しているなかで、意外と見落とされているのが、色の問題です。色の再現性を、どう保証するか。また、デジタル化されたデータの色彩を、どのように研究資料として使っていくのか。今後の、重要な課題であると思っています。

なお、デジタルの色彩については、私も、ひとつ論文を書いています。

當山日出夫(2007),「東洋学文献デジタルアーカイブの色彩学的諸問題」,『東洋学へのコンピュータ利用 第18回研究セミナー』,京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター

それから、この「東洋学へのコンピュータ利用」のセミナーは、毎年開催されています。私の手帳には、2008年3月21日に予定が書き込んであります。ただし、開催場所は、京都大学のどこか(これまで、旧・大型計算機センターを使っていましたが、この建物が取り壊しになるはず)、です。

その他の研究発表などについては、別のメッセージとして。

當山日出夫(とうやまひでお)

瀬戸です。

発表者の一人であったのでほぼ一日このシンポジウムに参加しました。

特別講演の模様は當山先生が既にお書きになっていたので、それ以外(特に関係分野のGIS以外)のところで
個人的にもっとも印象に残った発表は…

「顔画像のフラクタル次元と好感度の関係」でした。

フラクタルとは、(かいつまんで解説すると)図形のある一部分と全体が自己相似になっている形状を指し(例えば枝と葉の構造とか)、その形状を定量的に評価する方法としてフラクタル次元が用いられるそうです。

この研究では実在の人物の真顔と笑顔の口元の部分をフラクタル次元で分析することと好感度との相関について分析していました。

ここまでの私のつたない説明を読むと何のこっちゃ、JDHと関係あるのか?と受け取られるかもしれませんが、例えば、人物画や風景画などの絵画の「定量的な」分析にもこの枠組みが応用可能ではないかと、発表者が提示したことに非常に興味を覚えました。

人文学でやられてきた研究題材を全て定量化するという方向性が正しいとは私自身も思ってはいませんが、定量化(あるいは定量化するためのデジタル化)することで新たに見えてくる部分もあるのだなと実感する事ができた発表でした。

今回は他の研究会等と重なっていたので、興味があっても来られなかった関係者の方もおられるかと思います。(特に人文系資料のデータベース研究の動きや画像解析系は役に立つかも?)

シンポジウムの論文集が引き続き取り寄せられるなら、アートで1冊購入いただくことも良いのではないでしょうか。

當山日出夫 : 2007年12月26日 17:54

2007/12/26
當山日出夫

「人文科学とデータベース」シンポジウムですが、その論集のバックナンバーは、全冊、そろって入手可能です。

このシンポジウムは、第1回は、大阪電気通信大学で開催されました(このとき、私も発表した記憶があります……自分のことなのに、あまり覚えていない。もう10年以上前の話です。)

このシンポジウムの中心である、小沢一雅先生(大阪電気通信大学)に連絡すれば、手に入ります(全部でいくらになるかわかりませんが)。当日、小沢先生と雑談していたとき、今になっても、バックナンバーを第1号から希望する人(あるいは大学など)が、いるそうで、応じているとのことでした。

このことは他のコーナー(DH関連学会への参加について)で、新しくコメントしておいたこととも関連します。つまり、このDH・CHという研究領域については、いまになって各方面から強い関心が寄せられているということです。

また、フラクタル理論による画像解析については、今年、5月のCH研究会(大阪市立大学、この時は、私も発表しました)で、小沢先生が、浮世絵を事例にして、興味深い研究発表をなさっておいでです。

當山日出夫(とうやまひでお)

Nishikawa Yoshikazu : 2008年1月10日 15:16

西川です。

公開シンポジウム「人文科学とデータベース」論文集のバックナンバーを入手しました。
第1~4回、第6回~第13回の12冊になります(第5回は在庫切れでした)。

内容の詳細は、下記のサイトをご覧ください。
 http://www.ozlab.osakac.ac.jp/db/6.html

現在、アート・リサーチセンターのアーカイブ作業室にありますので、本拠点関係者でご覧になりたい方はぜひお立ち寄りください。

當山先生、瀬戸先生、ご教示ありがとうございました。

當山日出夫 : 2008年1月13日 19:58

2008/01/13
當山日出夫

西川さん、どうもありがとうございます。

私も、自分で参加したり、あるいは発表したりした回のものはありますが、それ以外はありません。

過去、10年以上にわたって、どのように、人文学の領域で、コンピュータが使われてきたか、その歴史をたどる意味でも、価値のある論文集だと思っています。

個人的には、デジタルとは無関係に、『萩原延寿集』(朝日新聞社より刊行中)に凝っています。ただ、萩原延寿の歴史学は、日本における人文学のあり方を考える意味で、読む価値があると思います。

當山日出夫(とうやまひでお)

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