これまで見てきたメディアは、歌舞伎の上演や役者を伝え、記録し、楽しむためのものであった。しかし歌舞伎は、それ自体がさまざまなメディアの題材ともなってきた。 江戸時代には人気の演目や役者が浮世絵や草双紙に描かれ、近代以降は小説、映画、テレビ、漫画など、多様なメディアの中で歌舞伎の物語や人物が繰り返し取り上げられてきた。一方で歌舞伎もまた、当時流行していた物語や事件、他ジャンルの作品を積極的に取り込み、新たな作品を生み出してきた。 このように、歌舞伎は、他のメディアへ広がるだけでなく、他のメディアからも影響を受けながら発展してきた芸能である。こうした現象は、今日でいう「メディアミックス」にも通じる。近年公開された映画『国宝』もまた、その一例といえるだろう。 本節では、歌舞伎が他のメディアから題材を取り入れ、また他のメディアへ展開されていく過程を紹介する。(戸塚)
3.5.メディアミックス
