映画『国宝』にも描かれたように、歌舞伎の世界には、名門の家に生まれずとも、己の芸ひとつで人気と名声を勝ち取り、時代を代表する名優へとのぼりつめた役者たちが存在した。磨き抜かれた演技によって観客を魅了し、その名を広く知らしめた彼らは、まさに“国宝的”ともいうべき存在であった。 一方、歌舞伎界には代々芸を継承し、名跡とともにその芸風を伝えてきた名門の家々がある。そこからは数々の名優が生まれ、歌舞伎の歴史と伝統を支えてきた。 本章では、門閥外から実力で大成した役者たちと、名門の系譜を受け継いだ名優たち、その双方の姿を通して、歌舞伎史を彩った“国宝的役者”たちを紹介する。(戸塚)
2.国宝的役者たち
