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●袴能(はかまのう)

UP1044[あらすじ]
周(中国)の穆王の時代に、里の女が帝王に三千年に一度だけ花が咲き実を結ぶ仙桃の実を捧げる。帝は西王母の桃であろうと喜ぶが、女は、自分が西王母の分身であり、この世を言祝ぐため、桃の実を持って再び訪れることを予言して消え去る。
人々が様々な管弦を奏して西王母の到来を待ち受けていると、西王母が桃の実を携えた侍女とともに真の姿を現わす。その桃の実を皇帝に捧げた後、西王母は優雅に舞いながら明け方の雲に紛れて天上へと帰っていく。
[場面解説]
 袴能の一場面である。袴能は、その名の通り装束や面をつけずに演能を行う略式の演能方法である。ツレの持つ桃から、上演している曲は「西王母」とわかる。侍女が桃を携えて登場するのはその後場である。後場では、仙女の姿を現した西王母が、侍女を伴って下リ端の囃子で華やかに登場し、桃をワキに捧げて舞い戯れる。ツレを演じる侍女は前髪の少年で、可憐な風情を舞台に添えている。
本来、後場の侍女の装束は側次を着用した唐人女出立で、前場での唐織とは違って異国風の情緒を感じさせる演出となっている。一方、前シテも通常は唐織であるが、演出によっては側次を着ける場合もある。