1.3五番立 ⇒TOP

●竹生島(ちくぶしま)

UP1002S.jpg [あらすじ]
竹生島参詣を思い立ったある廷臣が琵琶湖畔に向う。そこで老人と女が乗った釣舟を見つけ同船し、琵琶湖の美しい春景色を眺めているうちに竹生島に着く。老人は廷臣を弁財天に案内しようとするが、女人禁制であるはずの竹生島に女も一緒について来る。それを老人に問うと、「島に祭る弁財天も女体の神なのだから、それは謂れを知らない者の言葉だろう」と答え竹生島の由来を語る。しばらくして、自分たちは人間ではないといって女は社檀の扉の向こうへ姿を消し、老人は湖の主であると言い波間に消えていった。
やがて、竹生島明神の社殿が鳴動し、光り輝く弁才天が姿を現し、天女之舞を舞う。また、金銀珠玉を持った竜神が湖上に現れ、廷臣にそれらを捧げ、勇ましい舞を舞い、国土の鎮護を約束し、再び姿を消した。
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●忠度(ただのり)

UP0915S.jpg[あらすじ]
藤原俊成に仕えていた家来が俊成没後、旅の僧となり西国行脚の旅に出て、須磨の浦に辿り着いた。そこに一本の桜の木があり、僧が眺めていると、薪を背負った老人が歩いてきた。薪には山で折ったであろう桜の一枝がさしてある。その桜を手に取り、老人は桜の木の下で手向けをする。旅の僧がその老人に一夜の宿を乞うと、この桜の下ほどよい宿は無いと言い、平忠度ゆかりの地であることを説明した。そして僧に忠度の弔いを頼み、自分が忠度の霊であるとほのめかし静かに消えていく。
夜、桜の木の下で寝ていると忠度の霊が武人の姿で現れた。『千載集』に入れられた自分の歌が朝敵として「読み人知らず」とされたことを嘆き、作者名をつけてくれるよう俊成の子、藤原定家に訴えるよう頼むのである。話は一ノ谷の合戦に移り、岡部六弥太と組み合い討ち死にした事などを物語る。最後に僧に自分の回向を頼み消え去っていく。
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●楊貴妃(ようきひ)

UP0952S.jpg[あらすじ]
唐土玄宗皇帝に仕える方士(呪術師)は、楊貴妃の霊魂の行方を探せという勅命を受ける。そして天上界から黄泉まで尋ね、ついに蓬莱宮まで赴くと楊貴妃の霊魂と出会うことが出来た。方士が楊貴妃没後の玄宗の嘆きを伝えると、楊貴妃は玄宗と誓い合った時のことを語りだす。また自分は実は天上界の仙女であり、仮の姿として人間界に生まれた、そして皇帝に召され契りを結んだと話す。
思い出の霓裳羽衣(げいしょううい)の曲を舞い、去りゆく方士に形見の簪を与え、はかなげに見送る。
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●望月(もちづき)

UP0929S.jpg[あらすじ]
 信濃国の安田荘司友春は望月秋長に殺された。その家来・小沢刑部友房が営んでいる「甲屋」という宿屋に、弱々しくまた寂しげな妻子が一夜の宿を乞う。それは殺された友春の妻子であった。小沢は自らを名乗り、互いに再会を喜んだ。そこへ、友春を殺害した罪による13年の刑を終え、故郷信濃へと下っていた望月秋長が偶然にも甲屋に宿泊する。小沢はその旨を妻子に伝え、友春の妻を盲御前に仕立て、子・花若と共に望月の座敷に出す。 母は謡い、花若は八撥を打ち舞う。乱序の囃子にのり、赤獅子頭の小沢が登場、勇壮な獅子舞を舞う。芸尽くしを存分に楽しみ、旅の疲れもあったせいかすっかりまどろんだ望月の隙を見て、小沢と花若は望月の敵討ちをし遂げる。
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●海士(あま)

UP0925[あらすじ]
大臣藤原房前は、母が讃岐・志度の海人だと知り追善の為その地を訪れる。そしてそこにいた一人の海人から母の話を聞くこととなる。その昔、唐から氏寺の興福寺へ三種の宝が送られることとなったが、その内の一つ面向不背の珠が途中で竜神に奪われた。それを取り戻しに来た藤原不比等(淡海)は契りを交わした海人に、宝珠を取り戻せたら二人の間の子を藤原家の世継ぎにすると約束をする。海人は自分の腰に縄をつけ、竜宮へ飛び込み宝珠を盗み、乳の下を切り裂き珠を押し込め、血を流しながらも海龍たちから逃げ切り、戻った。この経緯を語った海人は、自分こそが房前の母だと名乗り、海へ消えていった。
母の話を聞いた房前は追善供養を行なうと、龍女となり法華経を手にした母の霊が現れ、成仏の喜びを舞にして表し、志度寺建立の因縁を語る。
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●絵馬(えま)

[あらすじ]
帝に仕える勅使が献上品を持って伊勢神宮に向かうと、そこには日照りの恵みを占う白絵馬を持った老人と、雨露の恵みを占い黒絵馬を持った姥がどちらの絵馬を掛けるかで争っていた。結果、万民のため、二つの絵馬を掛けることになり、実は自分たちは伊勢の二柱の神だと明かして消えていった。
やがて天照大神が雨鈿女命・手力雄命を従えて三神で現れ、舞を舞い、天の岩戸の謂れを再現し天下泰平を祝福する。
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●清経(きよつね)

UP0982 [あらすじ]
源平の戦のため、西国へ都落ちした夫清経の帰りを、妻は居宅にて一人で寂しく待ちわびていた。そこへ平重盛の三男である清経の家臣、粟津三郎が訪れる。粟津は清経入水の経緯を妻に語り、船中に清経によって残されていた遺髪を手渡す。妻は自分をおいていってしまったことへの恨みを見せて、栗津に遺髪を手向け返す。
悲しさに嘆き泣き伏し、転た寝していた妻の夢の中に清経の霊がゆっくりと現れる。妻は戦死や病死でもなくて、何故自分を置き去りにして命を断ったのか恨み嘆き、清経はその動機を話すから恨みを晴らしてほしいという。
清経は敵兵に追われ神仏にもすがったが、無益な戦いに疑問を抱き入水を決意した。そして舳先に立ち、愛用の笛を吹き、今様を歌いつつ南無阿弥陀仏を唱えて入水した。最後に清経の霊は修羅道に落ち苦しんでいたが念仏によって成仏することができた。
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●草子洗(そうしあらい)

UP0916[あらすじ]
宮中の歌合で大伴黒主は小野小町が相手と決まった。黒主は小町の歌の上手さには敵わないと思い、小町の家に忍び込み明日の和歌を詠んでいるところを盗み聞きしようと考えた。そして聞くことができた和歌を『万葉集』の草子に認める。  当日、帝の命令で紀貫之が小町の和歌を読み上げる。帝は絶賛するが、黒主はその歌は古歌であると訴え出、『万葉集』の草子が証拠だと突きつける。しかし、その小町の歌の墨色がおかしいので、勅許を得、水で洗うと歌はすべて消えてしまった。
非を恥じた黒主は自害しようとするが、小町が引きとめる。それまでの深刻な場から一転し、和解を祝う舞を小町が舞い、めでたく席が閉じられる。
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●葵上(あおいのうえ)

UP0874[あらすじ]
光源氏の正妻である葵上に物の怪が憑き、照日という梓巫女にその憑き物の正体を呼び出させようとする。巫女が弓の音を鳴らすと、上臈姿の女性が破れ車の乗って現れた。名を尋ねるとそれは六条御息所という光源氏が契りを結んだ東宮の未亡人の怨霊であった。
その怨霊は嫉妬心から恨み言を次々と話し出す。御息所は、皇太子妃として華やかな生活を送っていた。しかし夫に先立たれ、後に光源氏と契りを結んだが葵上に光源氏の愛を奪われてしまう。
病床に臥せる葵上を責め立てる中、横山小聖による祈祷が始まる。すると御息所の霊は鬼の姿となり、小聖に立ち向かおうとする。しかし小聖の懸命な祈祷によりついに祈り伏ふせられたのであった。
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●張良(ちょうりょう)

UP0933[あらすじ]
漢の高祖に仕える張良は夢の中で老翁と出会う。兵法を伝授してもらう約束をし、夢の中で約束した五日後に橋のほとりに行く。しかし、老翁は約束の時間に遅れた事を咎め、また五日後に来いと言い去っていく。これが第一回の試みであった。
五日後、張良は正装をし早暁に行くと威儀を正した老翁が馬に乗って現れた。そして自らを黄石公と名乗り、履いていた沓を川へ落とした。張良は急いで川に飛び込んだが、大蛇が現れ威嚇し沓を取られる。張良はすばやく剣を抜き立ち向かい大蛇から沓を奪い返した。黄石公は張良の働きを認め、兵法の奥義秘伝を授けるのだった。
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