1.2裏舞台TOP

●項羽(こおう)

UP0925.jpg[あらすじ]
 草刈りたちは、偶然来合わせた老人の渡し船に、便船を求めた。すると老人は船賃はいらないから乗りなさいという。やがて対岸についた時、老人は草刈りに船賃の代わりに背負っている籠の中にある虞美人草がほしいと言う。理由を尋ねると、この花は項羽の后虞氏を埋めた塚に咲いた花であると答え、項羽と漢の高祖の戦いの末、高祖に破れた項羽こそが自分であると明かし、弔いを頼み消えていった。
その夜、草刈りの夢の中に矛を持った項羽と虞美人の霊が現れ、華やかだった昔を偲ぶ。そして虞氏が身を投げ、項羽が矛の柄で探すも虚しく、再び戦の場へ戻り、悲憤の末の自刃までを再現してみせる。
[場面解説]
後場の鏡の間の一幕である。出端の囃子に合わせて、後シテ項羽とツレ虞美人が幕の内で出を待つ。シテには後見が鉾を持たせており、ツレはその後ろに控えている。ツレは、通常ならば小面などの女面をかけるが、本作品のツレは面をかけていない。このことから、ツレを演じているのは少年であることが予想される。少年期の時分には、一時的な花「時分の花」があると世阿弥は語り、その言葉を借りれば「童形なれば、何としたるも幽玄」なのである。
本図が描かれたのは明治31年で、画中に見えるほとんどの人物は散切頭になっている。蝉丸と同じく緊張感に包まれた鏡の間であるが、衝立にもたれかかり、楽しげに演者の出を見つめる人物は対照的である。