1.2裏舞台TOP

●通盛(みちもり)

[あらすじ]
阿波の鳴門の浦にて僧が毎夜平家一門を弔っていると、女と漁翁を乗せた小舟が漕ぎ寄せ僧の読経を聴聞したいという。僧が経を読んだあと、この浦で果てた人を知っているかと聞くと、平通盛と小宰相の局のことを語り海中へ沈み姿を消す。
経を読んでいると僧の前に通盛・小宰相の霊が現れた。一ノ谷の合戦前夜の悲しい別れや最後の有様を語り、僧の読経によって成仏できたことを感謝してまた海へと消えて行く。

 能「通盛」の冒頭、シテとツレが舞台に出る前に、後見が舞台上に作り物を設置している。この作り物は篝火附舟である。この場面の描写は面白く、後見が作り物を置く舞台でのひとこま、そして幕の内側で静かに出を待つシテとツレを同時にあげている。見所の観客の目線になり、同じ時間軸で現在の舞台進行と同時に幕の内側を巧みに描出している。鏡の間全体の様子を描くのではなく、じっと出の時を待つシテとツレに焦点を当てている。この作り物には、真ん中にツレが入り、後ろ側にシテが入ってシテが漕ぐ様を見せる。この構図は能「竹生島」も同じである。