2009年9月22日
道仙化学製陶所第4次発掘調査を行いました
京都市五条坂・道仙化学製陶所窯跡の第4次発掘調査を行いました。この窯跡は、理化学磁器(化学陶器)を焼成した登り窯で、1962(昭和37)年に操業を停止しています。操業停止後、危険防止地のために意図的に崩したこともありますが、2005年の調査直前の状態は、まさしく「遺跡」状態でした。4次に渡る調査で、6部屋ある京式登り窯であることを確認しました。理化学磁器という特殊な製品を焼成していたにも関わらず、窯構造は通常の京式窯と全く変わることがありませんでした。しかも、隣家では京式陶器窯が隣接しており、通常の京焼と完全に共存していました。
従来の京焼研究は、美術史・文化史中心でしたが、民俗調査や考古学的調査は不十分でした。また、こう
した理化学磁器や民芸など、京焼の一般的イメージから離れたものは軽視されてきたと思います。こうした「特殊な」製品も京焼の一部として認識することで、京都の歴史がさらに深まると考えています。
なお、この発掘調査は、京都建築専門学校の佐野春仁氏が主導する「登り窯を保存活用する会」の活動に呼応したものであり、考古学的な調査だけが目的ではありません。その成果を如何に活用するかも、今後の重要な目的になります。大まかな調査は終了しましたが、今後、さらに精査を行い、如何に整備するかという視点も伴いながら、調査を継続していく予定です。
発掘調査にあたっては、地主である楽只苑と
湯浅士郎氏、覆屋などを作って頂いた京都建築専門学校と佐野春仁氏のご協力・ご支援を頂きました。また、周辺の方々からも多大なご協力を頂き、道仙化学製陶所で使用していた亀板などの民具資料も収集することができました。
五条坂の町屋の奥、観光客が覗き見する、細く長い路地の突き当たりという、不思議で素敵な空間で過ごした暑い夏の日々は、決して忘れることのできない貴重な思い出になりました。「考古学」や「発掘調査」という概念からは想像できない希少価値のある調査でした。参加させて頂いた学生諸君にとっても、二度とない貴重な人生経験になったと思います。記して感謝の意を表します。
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