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2021年12月18-19日 字限図の撮影と整理
2021年12月19日(日)

2021年12月18日から19日に掛けて、メンバーの笠井賢紀、岡部佳世、松本章伸と飯守(笠井ゼミ学生)の4名で栗東歴史民俗博物館を訪問し、メンバーの中川敦之(同博物館学芸員)の助言を得ながら史料撮影を行いました。

今回撮影したのは、字限図(あざきりず)と呼ばれる地図史料で、1,140件(全件)の撮影を終えました。字限図を基に、栗東市内の小字一覧が暫定的に作成できました。また、既に撮影されマイクロフィルム化されている地券取調総絵図については、今後の分析に向けて再撮影が必要であることを確認しました。

これらの史料について、当プロジェクトではデジタルアーカイブ化を検討することにしました。

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研究メンバーには史料撮影の経験が十分にある者がいないため、インターネットや知り合いの研究者などからの情報を得て手探りで撮影を行いました。

撮影会場、撮影台、照明、電源、什器は栗東歴史民俗博物館にお借りしました。カメラとモニタを有線で接続し、史料をめくる者が撮影される画像を事前・事後に直接確認できるように工夫しました。また、カメラとタブレットを無線で接続し、シャッターはタブレットで切ることにしました。シャッターを切る者も大きな画面で撮影画像を確認できます。

1日目は撮影、2日目は撮影済データの全件確認を行いましたが、上記の工夫により撮影の欠落は1パーセント程度に抑えられ、再撮影は少なくて済みました。

20211218-1.jpg

字限図の撮影

字限図(あざきりず)は大字ごとに簿冊になっており、各葉が小字の地割りを描いた明治初期作成の史料です。いわゆる公図のうち、地籍調査以前の旧土地台帳付属地図と同様の史料(が基になっているもの)です。

字限図_078_目川_010_村ノ内-3.jpg

栗東市の場合、かなり多くの地域で地番と住所が一致し、他の資料を用いなくても字限図に記載されている地番から直接現在の地図との重ね合わせが比較的容易です。

とはいえ100年以上を経て、地割りや河川の形などが変わっているケースもあるので、今後、現在の地図との重ね合わせ(ジオリファレンス)をどのように行えるか検討が必要です。

栗東市は旧4村(治田、葉山、金勝、大宝)からなりますが、金勝の字限図は博物館に所蔵されていないという制約はあります。

小字情報の抽出

栗東市からの帰路でさっそく撮影データから小字名を抽出し、一覧化しました。

その結果、金勝を除く栗東市域全体で、28の大字で合計1,140の小字(大字あたり平均は41小字)があることが分かりました。

小字名称については地名研究を始めとした先行研究も多く、それらを参考にしながら今後の分析を行うための基礎データが整ったと言えます。

なお、小字については全国農地ナビで確認できる地域もありますが、栗東市域においては確認ができません。

また、『角川日本地名大辞典』にも小字一覧が網羅的に載っていますが、誤記や誤分類が見られるため、同書の根拠資料である「近江国栗太郡111ケ村字取調書」(滋賀県立公文書館所蔵)の確認が必要だと思われます。

地券取調総絵図のデータ確認

栗東歴史民俗博物館には地券取調総絵図という大字別の地籍図が20余件所蔵され、撮影されています。

一般的な閲覧には十分ですが、私たちの研究で精査していくためには、文字の可読性などの面で解像度の問題がいくつか確認されたため、今後、全件の再撮影を行おうと考えています。

デジタルアーカイブ化に向けて

上記の字限図、地券取調総絵図は貴重な史料群であるため、今後、立命館大学アート・リサーチセンターの協力を得ながらARCリサーチスペースにてデジタルアーカイブ化を図りたいと当プロジェクトは考えています。

ただし、土地境界をめぐる敏感な史料でもあるため、公開の方法や範囲については慎重に検討を重ねます。