2006年07月28日

●『日本の傳統色』新装版

長崎盛輝(ながさきせいき)著『譜説 日本伝統色彩考』という本は1984年に出版されました。当初は彩色したカラープレート付きであったため、非常に高価な本でした。 しかし、新装版が京都書院より1996年『日本の伝統色』として発行され、2001年には青幻舎から文庫版で刊行されています。コンパクトで非常に便利です。 この本は日本の伝統色225色を色名の由来や各色が登場する文献を掲載するなど、丁寧な解説が付けられ、巻末には色票がついており、文章だけではイメージ持ちにくい「色」を視覚的にも理解が深まる構成となっています。また、色を統一的な尺度で表記する際のマンセル表色系の色度記号やJIS一般色名も伝統的な名前と共に載せてあります。 「伝統色」というと「古い」とイメージされがちですが、現代の色名の表現や表色系の記号で表わされることによってより身近に感じられますし、色票は直接伝統色に触れることが出来ます。 色票を見ながら解説を読んで、微妙に異なる日本の色や色名の由来を楽しむことが出来ると思います。

●『色彩間苅豆』

『色彩間苅豆』の累の衣裳、淡紫色の秋草繍模様の振袖の下に着る襦袢は「白羽二重衿白地に赤紅葉模様の丸振袖」と言います。 襦袢は着付の下に着ているので普段は模様が見えないのですが、累が与右衛門に鎌で斬りつけられた後、肌を脱ぐと現れます。この赤紅葉を累の「血汐」に見立てて、衣裳によっても情景を表現しています。 血を流す場面ではありますが、血を紅葉に見立てることによって全く違う情景に見えます。