●本朝廿四孝 その7 原小文治
原小文治の衣裳 「紺地織物龍稲妻柄金馬簾付き四天 朱色地織物龍稲妻柄下馬簾 古金襴紐付 黒糸丸素網 紺地織物割帯」 〈衣裳用語〉素網…武者、忍者が使う小裂の一つ。黒の撚り糸で七宝編みにした編目の丸首シャツに似た形のもの。 黒・金・銀あり。
原小文治の衣裳 「紺地織物龍稲妻柄金馬簾付き四天 朱色地織物龍稲妻柄下馬簾 古金襴紐付 黒糸丸素網 紺地織物割帯」 〈衣裳用語〉素網…武者、忍者が使う小裂の一つ。黒の撚り糸で七宝編みにした編目の丸首シャツに似た形のもの。 黒・金・銀あり。
白須賀六郎の衣裳 「鶸色織物龍の丸柄金馬簾付き四天 鶸色蔦柄金馬簾付下四天 紺地龍柄千早 白羽二重衿胴襦袢 黒糸丸素網 紺地古金襴紐付」 〈衣裳用語〉四天…半纏を膝下くらいの長さにし、両脇にスリットの入った衣裳のこと。馬簾…四天などの裾に付いている房糸。
長尾入道謙信の衣裳 「白綸子二枚上付付き半着付 茶地織物龍蝦夷柄小忌衣 白龍紋茶暈長袴 白羽二重衿袖襦袢」 〈衣裳用語〉半着付…主に袴をはきっぱなしの場合に着る通常より短く仕立てた着付。衣裳独特の着付で、男性が 主。小忌衣(おみごろも)…将軍など位の高い武将の殿中での平常服。豪華な織物地。金色の華曼結びの紐。
花作り蓑作実は武田四郎勝頼 「鴇色縮緬武田菱繍浅葱上付付き半着付 紫繻子武田菱鳳凰繍浅葱裏裃 浅葱羽二重衿袖襦袢 白紐付、手筒」 〈衣裳用語〉鴇色…紫みの薄い赤のこと。武田菱…四つの菱が集って一つの菱紋を構成する文紋様で「四つ割り菱」とも呼ばれます。「武田」とい う役の名からこの紋様を用い、衣裳を役柄の見立てに用いていると考えられます。裃…江戸時代の武士の礼服。肩衣、袴の対。同色・同素材の肩衣袴の場合裃と呼びます。長袴を用い る場合は長裃と呼びます。
腰元濡衣の衣裳 松竹衣裳から刊行されている『歌舞伎衣裳附帳』には 「黒縮緬吹寄せ裲襠赤裾白付付き振袖着付 納戸色織物菊柄矢の字帯 白羽二重衿振袖襦袢 白羽二重裾除 白羽二重湯具 白羽二重丸絎」 とあります。 着付…いわゆる現代のきものを総称して衣裳では着付と呼びます。時代物・世話物問わず衣裳の根幹と なります。裲襠…打掛、掛などとも呼ばれ、着付の上に掛けて着るもののことです。衣裳では武家の姫、大名の奥 方、身分のある奥女中、また傾城役などが身につけます。矢の字帯…帯結びの一種。主に繻珍はじめ、織物地で出来ている丸帯を使います。この結び方は主に 武家階級の女性の帯結びです。
八重垣姫『歌舞伎衣裳附帳』には「赤綸子流れ水に扇面繍赤裾白二枚付付き振袖着付 赤綸子流れ水に扇面繍振袖赤裏裲襠 白地織物枝菊振帯 白綸子衿赤縮緬振袖襦袢 赤縮緬裾除 赤縮緬丸絎」 とあります。 本朝廿四孝の八重垣姫など歌舞伎に登場するお姫様はたいてい着付も裲襠も赤い振袖であることから「赤姫」と呼ばれます。この他にも「三代記」の時姫や「菊畑」皆鶴姫などがあげられます。 〈衣裳用語〉付付き着付(つけつききつけ)…一枚付けと二枚付けがあります。これは昔の着物で言う二枚重ね、三枚 重ねが省略された着付のことです。袷の着付に衿、袖口、上づけと裾に別布で仕立てた「つけ」を着付 の裏に付けたものです。振帯…振り下げ帯の略。舞妓さんのようにかかと近くまである帯結びのことです。豪華な帯結びの一つ です。 赤姫の衣裳の特徴・赤地綸子の総柄が多い。・梅・菊・蘭・竹の四君子や四季の花、扇面、流れ水、霞、雪輪などの模様。・裲襠も着付と対になった同じ模様・色。
琴平町金丸座で開かれる中村勘三郎の襲名披露公演で演じられる「本朝廿四孝 十種香」の主な役どころの衣裳解説を行います。 参考にしているのは松竹衣裳から刊行された『歌舞伎衣裳附帳』です。同じ演目でも衣裳が多少異なる場合もありますので参考にして頂けたらと思います。衣裳にも目を向けて歌舞伎を鑑賞するとまた異なった視点で歌舞伎を見ることが出来るのではないでしょうか。 「衣裳附帳」は歌舞伎の上演で用いられる衣裳の記録のことで、それぞれの公演で用いられた衣裳が記録されています。