• 日本文化研究班


2009年12月13日

平成21年度歌舞伎学会秋季大会において日本文化研究班より3名が発表(大西・周・加茂)

2009年12月12・13日に鶴見大学において「平成21年度歌舞伎学会秋季大会」が開催されました。
発表者と発表タイトルは以下の通りです。

加茂 瑞穂
「『妹背山婦女庭訓』お三輪の衣裳に見られる変遷と現行衣裳の出自」
周 萍 
「累からお岩へ」
大西 秀紀
「新派SPレコード・ディスコグラフィから見えるもの」
(発表順)
 

 

【発表要旨】

加茂瑞穂
本発表では、『妹背山婦女庭訓』四段目に登場するお三輪の衣裳の変遷と現行衣裳の出自について絵画資料を中心に検討する。衣裳は演出上重要な要素であるが、奇抜なデザインや色彩に目が向けられている。本発表では、衣裳を役柄との関わりや役者の解釈という点から取り上げ考察してみたい。
 お三輪の現行衣裳は「草色に石持、十六むさし模様」が定型となっているが、発表者による江戸時代後期の役者絵や番付を中心とした絵画資料の調査から現行衣裳定着以前は、着付に「麻の葉」が多く用いられていたことを確認した。現行衣裳の登場には九代目市川団十郎が関わっていることは既に指摘されているが、詳細な検討を行った研究はこれまでに見受けられない。そこで、発表者はさらにお三輪の役柄とされる田舎娘の衣裳を調査し、その過程で九代目市川団十郎がお三輪を演じる際に参考にした可能性のある絵画資料を確認した。「田舎娘」とある河原崎長十郎時代の役者絵には、現行衣裳と同じ模様が描かれていた。また、「田舎娘」とある役者絵を辿っていくと「草色に石持」という共通項を確認することができ、九代目市川団十郎の工夫による現行お三輪の衣裳には「田舎娘」という役柄が大きく関わっていたと考えられる。そこで、九代目市川団十郎はなぜ衣裳を変更する理由があったのかを「衣裳」という視点から当時の雑誌記事等も辿りながら九代目団十郎のお三輪に対する解釈について考察していきたい。

周萍
周知のように、『東海道四谷怪談』のお岩役は累狂言の累役と関わっている。しかし、具体的にどのように関わっているのか、ということについては未だに考察されていない。本研究は趣向を中心に、『東海道四谷怪談』が上演されるまでの累狂言を調べた上で、お岩役の趣向は、四世南北が書いた累狂言の累役に見られる先駆的な趣向を踏襲し、工夫を加えていることを解明し、累役とお岩役の類似性を論じる。そして、四世南北が自作の累狂言の累役の趣向に拘っていた理由は、寛政二年(1790)七月より江戸中村座で初演された、忠臣蔵を一番目、累狂言を二番目にしていた、初代桜田治助の『忠孝両国織』に対する継承の意識にあるのではないかという仮説を提示したい。

会場から質問いただいた点、コメンテーターの先生からいただいたご意見・アドバイスを受け、さらに詳細な検討の必要性を強く感じました。
 
大西秀紀
 明治21年12月の大阪・新町座における角藤定憲の壮士芝居に始まり、そこから現在の劇団新派へ至る新派劇120年の歴史は非常に入り組んで複雑だが、その時代々々の俳優の流れや演目の多くは、過去に発売された演劇レコードにもそのまま反映されている。「歌舞伎 研究と批評 43」に発表した、拙稿「新派SPレコード・ディスコグラフィ(未定稿)」に掲載したレコードは959面(約480枚)に及ぶ。これは現在約1200面が確認されている歌舞伎SPレコードに引けを取らない分量であるが、その内容は尾崎紅葉、泉鏡花の作品に留まらず、シェークスピアから軍国美談、劇中の挿入歌や声色芸まで含んでいる。これらのレコードは日本の近代演劇の歩みを知る上で、決して無視することができない一級の音声資料であるといえよう。
 ディスコグラフィの情報をレコード会社別に並べてみると、オリエントやバタフライ、ニットー、タイヘイといった関西系やツル・アサヒ等の中京のレーベルで制作・発売されたものが、日蓄などの東京系に対し2対1の割合で多いことが分かる。レコードの市場はあくまでも全国的なものだが、この割合にはやはり地元の購買層の嗜好が大きく反映されていると見るべきではないだろうか。
 本発表では、これら関西系レーベルから発売された音源を中心に、新派レコードに対する関西からの視線について考察を加えたい。

 

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