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2012年3月16日

占領期を考えるワークショップ

 「占領期京都を考えるワークショップ」が、 3月16日(金)に占領期京都にゆかりのあるflowing KARASUMA(旧北國銀行)を会場に開催されました。本ワークショップは、京都市明細図に関する研究の一環として、1945年の太平洋戦争直後から数年間にわたる「占領期」に着目し、これまで明らかにされていなかった当時の京都の状況を、空間-文化-社会的側面から分野横断的に検討する試みとして行われました。

 ワークショップの冒頭、歴史地理情報研究班リーダーの矢野桂司教授から、本ワークショップが地理学と歴史学の協働を契機に始められた背景を説明し、基調講演として西川祐子氏(元・京都文教大学教授)による占領期京都の概観が解説されました。「占領期」はこれまで、人々の記憶として抹消したい・あるいは否定的な見方をされてきた側面が少なからず存在していた一方、今日の京都に多大な影響を与えた点に着目する必要性を西川氏は指摘し、特に当時の状況を記憶・経験されている方々に直接お話を伺う重要な局面にあると述べました。

 続いて、赤石直美氏(衣笠総合研究機構PD)より、今回の研究の基礎となった「京都市明細図」のデータベース化と活用に関する紹介があり、昭和初期から占領期における京都市街地のさまざまな状況について地図を交えた紹介がありました。これらの報告を受け、「占領期京都の研究可能性」として、長志珠絵氏(神戸大学国際文化学部 教授)は、史料的観点から占領期京都についての研究経過を紹介し、占領経験がこれまで圧倒的に語られてこなかった(=語れない)構造にあったことを述べました。また、玉田浩之氏(京都工芸繊維大学・特任助教)は建築史的な観点から、接収施設や住宅の構造、そしてその住まい方について、これまでの知見を整理しながら、さらなる研究が必要であるとを述べました。

 以上、現在までの占領期京都をめぐる研究と今後の可能性を来場者と共有した後、占領期京都を直接体験された3名のパネリストから当時の文化-教育-政治的な状況についてお話頂きました。パネリストはそれぞれ、占領期時点での年齢や居住・活動地域が異なっていたため、自らの関係する地域の状況を、スクリーンに投影された京都市明細図を基にお話し頂きました。

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関連URL:
・立命館大学PICKUP 地理情報と記憶をもとに終戦直後の京都を読み解く「占領期京都を考えるワークショップ」を開催

京都市明細図オーバーレイマップ: Google Maps上で京都市明細図の画像と現在の地図が重ねて閲覧できます)

京都市明細図ワークショップ開催(2011年6月15日開催): 本ワークショップの基となった「京都市明細図」に関するワークショップ開催記事です。

 (記録:瀬戸寿一)

 

 

 

 

2012年3月13日

国際GISセミナー: GIS and Digital Humanities

 3月13日(火)に立命館大学歴史都市防災研究センター・カンファレンスホールにて、国際GISセミナー「GIS and Digital Humanities」が開催されました。講演者として、英国St.Andrews大学よりA. Stewart Fotheringham先生、台湾Soochow大学よりC.S. Stone Shih先生をお招きし、それぞれの先生が取り組んでおられる研究テーマとDigital Humanitiesとの関連性についてお話いただいきました。

 一人目の講演者であるA. Stewart Fotheringham先生は、ジオインフォマティクスセンターの所長を兼務されており、計量地理学・ジオコンピュテーションの立場から1845年から49年にかけて起こった「アイルランド飢饉」に関する人口推移や社会-経済的状況に関する分析についてお話されました。

  Fotheringham先生は、まずカルトグラム(統計データに基づいて地図を変形させ、視覚的に空間的特徴を表す方法)や統計地図を通じて1841年から現在に至る人口推移を説明し、オンライン歴史アトラス(NCG Online Atlas Portal)について紹介されました。また、飢饉に伴う人口減少については幾つかの要因の存在が考えられることから、1891年当時の選挙区に関する境界データを用いた、ミクロな空間分析の結果を解説されました。ここでは、ミクロな空間単位での地域明らかにする手法として、GWR(Geographically Weighted Regression)を用いることで、新たな知見―飢饉を引き起こす影響は全国的に一定でないことや、ミクロな単位での地域的差異―が明らかになったことについて述べました。

 二人目の講演者であるC.S. Stone Shih先生は、社会地理学とGISの観点から1930年代~1960年代における台湾での「演歌スタイル」の音楽にまつわる文化空間について紹介しました。Shih先生は、Center for Social Geographic Information Systems(CSGIS)の重要なコンセプトとして、Social GISというモデルを立ち上げ、社会空間の分析にあたって定量的なデータとともに定性的なデータ(フィールドワークやインタビューに基づくもの)の重要性を述べました。

 演歌スタイルという日本の歌謡曲を模した音楽が流行した経緯を紹介するとともに、台北の代表的な3つのストリートでの音楽産業やホールなどの分布を通して、当時の街路の状況を復原した様子、あるいは1937年以降の太平洋戦争に伴う街での騒乱について解説されました。こうした、台北をめぐる社会および文化をめぐる空間変容について、Shih先生は地図・写真・音楽・インタビューといった様々な資料が活用可能であることを述べました。

 お2人の講演は、使っている分析手法や対象こそ異なるとはいえ、地域の様々な種類の資料をGIS(地図的な分析)で検討し、その要因や背景についてミクロな空間に着目する点で共通しているといえるでしょう。また、分析に用いた歴史的資料や統計データのデジタル化を重視することで、例えばアイルランドの歴史地理を外観できる歴史アトラスや、台北音楽に関するオンラインミュージアムなど、社会や文化をめぐる地図や仮想空間によるアーカイブ発信を行なっている点で、対象についての門戸を広げ学問分野を横断した議論の基礎的な資料にもなっているといえるでしょう。

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(記事:瀬戸寿一)

2012年3月13日

【告知】国際GISセミナーの開催

 来る3月13日(火)に国際GISセミナー「GIS and Digital Humanities」を開催いたします。英国よりA. Stewart Fotheringham先生、台湾よりC.S. Stone Shih先生をお招きし、ご講演頂きますので、ぜひご参加ください。(PDF版はこちら

タイトル:GIS and Digital Humanities
日時:2012年3月13日 15:00~17:45
場所:立命館大学歴史都市防災研究センター・地階カンファレンスホール

参加費無料 (定員50名)
 ※事前申込は不要ですが、定員を超過した場合お断りすることがあります。
 ※講演は英語で行われます。

お問い合わせ先:hgis.ritsumei@gmail.com

[講演1]
Prof. A. Stewart Fotheringham
(Geography and Sustainable Development
Director, Centre for GeoInformatics, University of St Andrews, UK)

A New View of the Irish Famine through Geographic Information Science and  Geographically Weighted Regression

     The Irish Famine (1845-49) had a devasting impact on the Irish population from which the country has still not recovered.  It also had a major impact on the populations of countries such as the US, the UK and Australia - major destinations of Irish migrants fleeing the famine.  This seminar will present new, detailed information on the spatial impacts of the Irish famine and will explore the determinants of spatial variations in the impacts of the famine in terms of population loss within the country.

[講演2]
Prof. C.S. Stone Shih
(Department of Sociology, Soochow University, Taiwan
Director, Center of Social-Geographic Information Systems(SocGIS))

Digitalized Enka-stylish Taipei: The Japanese Cultural Space of Taiwanese Ballad’s Imaginary

     The lecture examines the popularity of Taiwanese Ballad as an example of music form with mixed-blood influences from Japan that evolved into the Taipei’s three cities regions, Bangka, Dwaduedia, and Ximending(Seimonch?)from 1930 to 1960. All those cultural imaginary, historical discourse entangling with cultural products and imbued with cultural meanings, as a critical to an understanding of places of Japan’s enka in the lives of their listeners via GIS mapping. With the help of historical GIS, digital humanity, and the VR (virtual reality) technologies created a 3D, sphere-like environment, to develop a virtual museum documenting the life and deeply-enka-stylish creations of the top Taiwanese Ballad singer-songwriter Hung Yi-feng, providing visitors a digital glimpse into the world of Music Taipei. 

 

 

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