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原田昌幸Masayuki Harada 文化庁美術学芸課 主任文化財調査官

昭和33年5月東京都生まれ。昭和56年3月國學院大學文学部史学科(考古学専攻)卒業。
 昭和56年4月千葉県立房総風土記の丘学芸員、(財)千葉県文化財センターを経て昭和61年11月文化庁美術工芸課文部技官。その後美術学芸課に改組、現在主任文化財調査官。

著書『撚糸文系土器様式』(ニューサイエンス社) 、『山岳信仰の美術 出羽三山』至文堂、『土偶とその周辺』I・II ぎょうせい。
縄文時代の考古学と山岳信仰に関心を持つ。


2日目: 発表要旨Overview考古学研究に見る土偶の変遷

土偶は,縄文時代を代表する呪的・精神的遺物である。
 日本考古学130年の歩みの中で、土偶はその特異な風貌や造形表現の奇抜さから、多くの研究者に注目されてきた。

現在、全国の遺跡から出土した土偶は1万8000点程度と考えられ、その約9割は縄文時代の遺跡が濃密に分布する東日本からの出土である。
 研究が始まった当初、わが国先史時代の民俗・風俗研究に資されることが専らであった土偶も、ここ半世紀の研究によって形態分類が試みられ、近年ではその精神性や役割期待についても、盛んに考察が加えられるようになった。
 これは縄文人たちが1万年間にも亘って伝承しようとしてきた"心の文化"を、現在に生きる我々がいかに復元し、そこ託された未来へのメッセージを読み取るか、という考古学に課せられた目的への接近の試みでもある。

今回は、このような研究動向を踏まえて、発生期の土偶造形が、その後どのような発展を遂げ、そこに縄文人達は何を表現しようとしたのかを、「土偶における形態の変化」を紹介しながら探ってみたい。

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