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林美一コレクションについて

  春本(艶本)・春画研究の第一人者であった林美一氏の蒐集にかかるコレクション。晩年まで手許に置いておられた江戸戯作を中心とする一大コレクションを、遺族からアート・リサーチセンターに寄贈されたもの。

 林氏は、曲亭馬琴を代表とする後期江戸文芸の研究においても大きな足跡を残しており、コレクションそのものは、江戸中後期の戯作がジャンルにこだわることなく、バランスよく配置されている。氏の著作の中心を占める春本(艶本)の名品も多い。その多くは、錦絵摺による極彩色の挿絵が入り、すぐれた版画美術品ともなっている。
hayBKE4-0007a_004.jpg  ジャンル的には、浮世草子から、風俗絵本、黄表紙や合巻、洒落本・滑稽本・人情本の類、馬琴を中心とする読本類であり、そこに艶本・春本が混在している。いわゆる軟文学が主体となるが、出版史の裏面にまで亙ってバランスよく蒐められているのが特長である。なお、江戸期板本類以外にも、江戸文学・江戸風俗史研究に関する文献(活字本)も、ほぼ網羅されており、アート・リサーチセンターの貴重な研究資源となっている。


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