04三浦屋揚巻 花川戸助六

絵師:三代目豊国
落款:任好七十九歳豊国筆
判型:大判錦絵 1
版元:近江屋久次郎
改印:子二改
出版年:文久4年(
1864)2月
配役:三浦屋揚巻<2>岩井紫若 花川戸助六<1>河原崎権十郎
 助六、揚巻は歌舞伎十八番として有名な「助六所縁江戸桜」の主人公である。この絵では、助六の髷がばっさりと切り落とされている様から、「助六所縁江戸桜」のラストシーンを描いていると思われる。助六と、その恋人揚巻を狙う意久とが対決するシーンで髷を切られた助六は、そのあと廓内から逃げ出そうとするが見つかってしまう。そこで揚巻が自分の打掛の裾に助六を匿う、というのが描かれているシーンだ。歌舞伎の世界の中で「男伊達」といえば助六だろうと言われるほど、助六は弱きを助け強きをくじくという庶民の憧れの的であった。それを表すかのように、助六の絵は見得を切っているものが非常に多いが、助六と揚巻二人きりで描かれているものには見得を切っているものは少ない。物語の中で助六は、ピンチを幾度となく揚巻に救われており、そのような心を許した恋人にだけ見せる伊達男の「裏側」を表現することで、二人の仲の深さを表現しているのではないだろうか。本作のような助六と揚巻が二人で描かれている浮世絵というのは、「助六所縁江戸桜」の中でも二人の恋愛に重点を置いた希少なものだと考えられる。