荒事

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あらごと(Aragoto


総合


歌舞伎

歌舞伎劇の特色の一つである演技演出。超人的な力を持つ主人公が、舞台一杯にその勇猛ぶりを発揮するのであるが、その演技演出は極めて誇張的、様式的で、顔に隈取をし動作発声は豪快で大まか。使用する衣裳小道具その他すべて非写実的な誇張がある。 延宝元年(1673)初世市川団十郎が江戸中村座で演じた「四天王稚立」がこの荒事の最初で、以来代々の団十郎が継承して市川家の家の芸となった。とくに江戸で発達した荒々しい演技で、後に上方の和事と対比されるようになる。歌舞伎十八番の「矢の根」「」「国性爺合戦」の和藤内、「車引」の梅王丸、「伽羅先代萩」の男之助等にあらわれる。 以前よりあらごとのかいさん.或は金平.朝比奈.燓噲.などになられ.大盃で.軍半に.酒を呑ふだり.門を破り.虎を引さくたぐひよく.其上男一道の手づよき所作(元禄13(1700)年三月刊『役者談合衝』市川団十郎評)

団十郎の新機軸とは?

荒事は荒人神の信仰から発生した表現形式である。(「現人神か鳴神かとみな/\恐れて見えにけり」元禄11年『源平雷伝記』)荒事のような荒々しく超人的な力をみせる演技形式は古くは能の修羅物、金平浄瑠璃などにもみられるが、それらの演技様式を受け継ぎつつ、神霊事を初代市川団十郎の身体表現を通して当代化させることによって、江戸の舞台様式として成立し、伝承された。

代表演目

演技の類型

扮装

参考文献

  • 郡司正勝「荒事の成立」(『かぶき-様式と伝承-』学芸書林、昭和29年)
  • 郡司正勝「荒事の世界」(『季刊歌舞伎』別冊、昭和44年9月)
  • 今尾哲也「荒事芸の成立」(『変身の思想』法政大学出版局、昭和45年)
  • 郡司正勝「現人神と御霊神」(図説日本の古典『歌舞伎十八番』集英社、昭和54年)
  • 諏訪春雄「御霊信仰と荒事芸」(『文学』昭和54年8月号)
  • 武藤純子「荒事考-元禄歌舞伎を中心にして」(『武蔵大学人文学会雑誌』16-2、昭和59年12月)
  • 佐藤恵里「荒事と金平浄瑠璃の人形芸-その地盤」(『文学』昭和62年2月)
  • 岩井眞実「荒事とその周辺」(『藝能史研究』103号、昭和63年10月)
  • 岩井眞実「物真似芸としての荒事」(『歌舞伎研究と批評』第四号、平成元年12月)
  • 鳥越文蔵「元禄期江戸と上方」(『元禄歌舞伎攷』八木書店、平成3年)
  • 武藤純子「元禄歌舞伎以降の荒事-『荒実事』の出現と荒事への吸収」(『演劇研究』15、平成4年3月)
  • 佐藤恵里「元禄歌舞伎<江戸>」(岩波講座歌舞伎・文楽第二巻『歌舞伎の歴史Ⅰ』岩波書店、平成9年)
  • 和田修「元禄期の江戸歌舞伎」(新日本古典文学大系『江戸歌舞伎集』解説、岩波書店、平成9年)