翻刻:
はる霞たてるやいつこ美よし野の 山口三浦うら/\と
うらわか草や初花に 和らぐ土手を誰がいふて 日本めで度
国の名の 豊芦原や吉原に 根ごしてうゑし江戸ざくら
匂ふ夕べの風につれ 鐘ハ上野か浅草に 其名をつたふ花川戸
助六出「をちこち人の呼子鳥 いなにハあらぬ逢瀬より 爰をうき世の
中の町 よしやかハせしこしかたを 思ひ出みせやすがゝきの 音〆の
ばちにまねかれて それといはねどかほよ鳥 間夫の名とりの草の花
此間せりふ「 おもひそめたる五ところ もん日待日のよすがさへ 子供がたより待合の 辻うら茶やにぬれて為(ぬ)る 雨のみの輪のさえかへる 此間せりふ「このはちまきはすぎしころ 由(ゆ)かりのすぢのむらさきも 君がゆるしの色見えて うつりかハらでときは木の 松の髪先すき額 此間せりふ「つゝみ八町風誘ふ 目当の柳花の雪傘に つもりし山あひハ 富士と筑波をかざし草 くさに音せぬ塗鼻諸 ひとつ印篭ひとつまへ「せくなせきやるなうき世ハ車 めぐる日並の約束に まがきへたつて
おとづれも 果ハくぜつ歟ありふれた 手くだにおちてむつごとゝ
なりふり床し君ゆかし 此間せりふ 「しんぞいのちをあげまきの これ助六がまへわたり ふぜいなりける次第なり
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