歌舞伎を観る観客にとって、宣伝材料が「劇場へ向かうためのメディア」であったのに対し、実際に劇場へ足を運ぶと、「芝居を理解し、楽しむためのメディア」が求められた。そうして生まれたのが、観劇の手引となる役割番付や絵本番付である。 これらには出演役者や配役、名場面などが記され、観客の理解や期待を助けるとともに、観劇後には芝居の記憶を持ち帰るための出版物としても機能した。時代が下るにつれ、その内容はより詳細化し、舞台進行や場面説明を補助するパンフレット的性格を強めていく。 さらに近代以降には、筋書や解説が加わることで、現在の歌舞伎公演で販売されている「筋書」や「プログラム」へと発展していった。本節では、観客が歌舞伎を「見る」ために支えとなった、これら観劇手引の変遷を紹介する。(戸塚)
3.2.観劇手引
