3.2.3.絵本番付・絵尽3

判型:中本1冊
上演:天明2年(1832) 11月1日 江戸・市村座
外題:伊勢平氏栄花暦 春斯立帰花
資料番号:arcBK03-0126-02 所蔵:立命館ARC

 絵本番付は、各興行のあらすじや見どころを視覚的にわかりやすく紹介した絵入りの小冊子であり、現代の公演プログラムの源流にあたる出版物である。小型の縦冊子形式をとり、表紙には劇場の櫓紋と外題が掲げられる。ページをめくると、序幕から大切に至るまでの名場面が、芝居の進行に沿って描かれている。
 絵本番付は、元禄期に出版された絵入狂言本の挿絵部分が独立して成立したものである。江戸時代初期には、狂言の筋書きを文章中心で詳しく記した狂言本が読まれていたが、観客は劇場内でより手軽に芝居の展開を理解できる視覚的なガイドを求めた。そのため、役名や短い台詞など最小限の文字情報に絞り、挿絵を主体とした絵本番付が発達していったのである。
 延享初年頃からは、表紙に「狂言絵尽」と刻した出版物が継続的に刊行され、明和末年頃まで続いた。さらに安永期には「狂言絵本」と呼ばれる形態へ発展し、複数系統の絵本番付が並行して刊行されるほど人気を博した。天明頃になると、絵本番付は興行ごとに刊行される実用的な上演出版物として定着し、幕の抜き差しなど江戸歌舞伎特有の上演変更にも対応するようになる。
 本作は、まさに絵本番付がこうした実用的出版物としての地位を確立していく時期の作例である。冊子内には役者の姿や衣装、舞台装置などが生き生きと描かれており、観客は文字を細かく追わずとも、直感的に物語の展開や舞台の魅力を理解することができた。(宮﨑・戸塚)

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